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部誌提出作
怪談ループ@
この学校の怪談、知ってる?
七不思議所じゃなくて、全ての場所に怪談があるんだって。
中でも一番怖いのは鏡の噂。
学校って絶対全身が映る鏡があるよね?
夜中に学校でその鏡を見ちゃうと――
学校で永遠に死に続けるんだって。

「きゃあっ!」
私の友達の優が叫び声を上げる。
「もう優ったらー」
けらけらと隣の友達が笑う。
「だ、だってー…」
「そんなの実際に起こる訳ないじゃん」
私も笑いながら優に言う。
「もう今日部屋から出られないよぉ…」
「いくらここが学校だからって怖がりすぎっ」
優の怯えように私は諭すように言う。
そう、ここは学校。夏休みの合同合宿中。本来は別に宿泊場所があるのだが、申請すれば学校内で泊まることが出来る。そして私達は申請してこの部屋に泊まっている訳だ。
「さっ、怪談も出尽くしたし寝よっか」
「そだね」
「うう、夜中トイレに起きませんように…!」
優がそう呟きながら半泣きで布団に入る。
「大丈夫だってば。じゃ、おやすみー」
「おやすみ」
私達は眠りについた。

夜中、私はトイレに行きたくなって目が覚めた。私は皆を起こさないようにそっと部屋から出る。トイレは部屋にはなく、ちょっと離れた所にあるのだ。ちょっと怖いけど、学校だから仕方ない。
用を足し、トイレから出てふと全身まで写る鏡が目に入った。
さっきの話を思い出して覗いて見るが、何も変わり無い。…当然だ、だって本当に起こる訳無い。
――と、
ぎぃいいいいいっ!!
何かを引っ掻いた様な不快な音。
「……っ!」
あまりのうるささに耳を塞ぐ。しかし、全く効果は無く、気が狂いそうな音が続く。
…何秒経っただろうか。唐突にそれは止んだ。
「何だったの…」
顔を上げ目の前にある鏡を見ると、
鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡。
鏡の奥に鏡、その鏡の奥にはまた鏡があった。それが延々と続いている。いわゆる合わせ鏡というやつだ。
「後ろに鏡なんて無いのにっ…!」
そう、後ろはトイレがあるだけで鏡なんて無い。合わせ鏡なんて起こる訳ないのに。
ぎぃいいい、
先程の音がやや小さめに響いた。
「え…!?」
鏡と鏡の間に、1人だけ人が写ってる!?
私以外に、そこの鏡の部分だけ。他の鏡には写ってない。
……誰、だろう?
私はこの時一番やってはいけないことをしてしまった。その人をよく見ようと顔を近づけたのだ。
その人は鏡を見ている私に向かって手を伸ばす。
伸ばして、
伸ばして、
伸ばして、
伸ばして、
それは鏡を越えて…私を掴む。それが私を鏡の中へ引きずり込むのを私は他人事のように見ていた。
                       【取り込む鏡】

……あれ?もしかして、私一瞬寝てた?
そう思うのは、トイレで意識が遠退いて転けたから。トイレで寝なくて良かった。
「っと、トイレトイレ」
はっと本来の目的を思い出して、トイレの個室に入る。用を足して、ドアを開けようとすると。
こん、こん、こん、
ノックの音がした。
「?今出ますー」
他にもあるんだからそこを使えばいいのに変な人だ。しかし、かちゃりと扉を開けても誰も居なかった。
「あれ?」
別の個室に入ったのだろうか?それともたちの悪い悪戯?
「こっちだよ」
その声は今出てきた個室から聞こえた。
振り返ると、真っ赤な服を着た女の子が便器の中に居た。
「えっ!?」
「あたし、花子って言うの」
花子と名乗った女の子はそう言うとずるり、と気持ち悪い音を立てながら便器から出てきて、私の腕を掴んだ。
「ひっ…!」
私は手を振り払おうとするが、花子は痛いほどに手を掴んで離さない。
「こっちにおいでよ」
花子はその外見に見合わない強い力で私を引っ張ってきた。
「ちょっ…痛っ、やめてっ」
「えへへ」
花子は真っ赤な口を開きながら私をトイレの中に引きずり込む。そんな小さな便器に人間は入れないよ。でも花子はそんなこと気にしないで引っ張る。
「ぎゃああああっ!!」
ごきっと腕の関節が外れる音がした。ついでポキポキというちょっと情けない音。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
右肩まで引きずり込まれた。相変わらず引っ張られる感触があるけど、胴体なんて入らない。
ぼきっという音。
首の骨、折れちゃった…――。
                    【トイレの花子さん】

ふらっ、と体が傾いた。
「っとと」
うとうとしてて危うく転ぶ所だった。
みんなの部屋に戻ろうと廊下を歩き始める。というか、どうせ部屋に帰ってもみんな寝ちゃってる。今のですっかり眠気が覚めてしまった私は部屋で読む本を図書室で借りる事にした。
「意外に沢山あるなあ…」
さっさと借りてさっさと戻ろうと思ったけど、面白そうな本がいっぱいあってなかなか決められない。
「……あれ?」
本棚の奥の方に何かある。手前にある本をどかして手に取ってみると、それはタイトルも何もない真っ黒な本だった。ページを開いてみても真っ黒な上に何も書いてない。
「何だろうこれ…」
訳が分からずそう呟くと、じわりと何かが浮き出てきた。
赤いインクで書かれたそれは文字のようだった。
『いたいいたいいたいいたいいたいたすけていたいたすけてわたしがなにしたのいたいたすけていたいわからないたすけていたいいたいたすけていたいいたいいたいおかあさんいたいいいこになるからいたいたすけてだれかいたいいたいたすけて』
文字を読んでいくと同時に、無数の声が頭の中に流れ込んできた。
『いたいいたいいたいいたいいたいたすけていたいたすけてわたしがなにしたのいたいたすけていたいわからないたすけていたいいたいたすけていたいいたいいたいおかあさんいたいいいこになるからいたいたすけてだれかいたいいたいたすけて』
何これ!?
「い、いやあああああぁぁ!!」
本を離して耳を塞ぎたくても、手が本から離れてくれない。いや、本が手を離してくれないのか。
いくら叫んでも、いくら本を離そうともがいても、声は止まない。
「たすけてたすけてだれかたすけてだれかだれかだれかたすけて」
叫びは永遠に止まらない。
                        【呪いの本】

ふらっ、と体が傾いた。
「っとと」
うとうとしてて危うく転ぶ所だった。
みんなの部屋に戻ろうと廊下を歩き始める。というか、どうせ部屋に帰ってもみんな寝ちゃってる。今のですっかり眠気が覚めてしまった私は学校を探検する事にした。
「あ、理科室」
理科室なんて授業の実験で使う以外にあまり行ったことが無い。ここに入ってみよう。
「お邪魔しまーす…」
棚には見たことのない薬品や模型がいっぱいある。その中には有名な人体模型や骨格標本もある。
「夜中に見るとちょっと怖いな…」
まさにお化けとか出そうな雰囲気。
とは言え、そんなに広い理科室では無い。視界を一周させれば全部確認出来る距離だ。すぐに見るものはなくなってしまった。戸棚とかを開ければ何かあるのだろうが、そこまでして見たくはない。
「戻ろうかな」
そう呟いたとき。
こと、
「……っ!?」
反射的にお化けかもと思ってしまうのは、ここが理科室だからだろう。
見回してもも当然誰も居ない。
「……?」
今、骨格標本が動いたような…。
いや、気のせいだ。無機物が動く訳がない。
そう考えてさっさと出て行こうと一歩右足を踏み出す。
「あっ」
何故だかバランスが取れなくて転んでしまった。立ち上がろうと力を込めても右足に力が入らない。
不審に思って足を見てみると。
足が、無かった。
右足の膝から下が骨以外無かった。
「いっ…ひぎゃあああああぁぁっ!!」
自覚した途端、尋常でない痛みが襲ってきた。私は痛みで気絶することも出来ず、悲鳴をあげてのた打ち回る。
カタカタカタ、
そんな音に構っている余裕は無かったが、私は反射的にそっちを見てしまった。
そこには私の足を持った骸骨、いや骨格標本が居た。骨格標本は私の足をまるで靴下を履くように右足へと入れる。
……ああ、そうか。骨しかないから肉が欲しいんだ。
私の右足を履き終えた骨格標本は今度は左足へと手を伸ばす。
ずる、
気持ち悪い音がして膝から下が骨だけ残して抜けた。
「ああああああぁぁ!!」
こんな大声出せたのかと言う位叫ぶ。もう人間の叫び声じゃなかった。
また骨格標本は私の足を履こうとしている。その間私は放置だ。
痛いのに私はまだ死ねない。何で早く殺さないの?いっそのこと…早く殺して。
骨格標本が再び手を伸ばす。今度は右手のようだ。
「あああぁぁああぁああああぁ」
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く!
早く私を殺して!
                 【人間になりたい骨格標本】



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