部誌提出作 白黒予想迷走探偵注意報@ テーマ「大正ロマン」 名前は同じですが、なんか大正時代の設定。 その割に色々と変なのは……気に……しないで……。 この学校には国語研究室つまり国研が二部屋ある。一つは普通の国研、もう一つは赤空葉菊(あかぞらはぎく)のための国研だ。 彼女がいると教師も生徒もかなりの被害をうける。そのため、隔離的な意味で一人部屋になったらしい。なんであんな人が教師の資格を取れたのか大いに疑問だ。それ以前にどうして退職させないのかも。 そして俺はたった今、その赤空葉菊の国語研究室に居る。別に国語の成績が悪いくて呼ばれている訳じゃない。理由は至極簡単。居たくてここにいるから。じゃあ何のためにここにいるのかと聞かれれば、ゆったりできるから。ここは西洋の長椅子(ソファーと言うらしい)があるしお茶(紅茶と言うらしい)も飲める。たまに赤空葉菊が居て騒がしいのが難点だが、それは国研なので仕方がない。 がらり、と突然引き戸が開き、俺の思考を遮る。リリスだった。 「裕さん!」 「…小城(こじろ)さんうるさい、少し黙ってくれないか」 「な、何でそんなによそよそしいんですかー!」 「うるさいからだよ」 リリスはむう、と唸って俺の隣に黙って座った。 父親が欧米人で母親が日本人の混血だ。(ハーフと言うらしい)この学校では珍しい金色の髪だ。思っている事がすぐ顔に出る。 「それで図書室でどんな大変な事を聞いたんだい?」 「裕さん!推理しないで欲しいです!驚かせたかったのにー!」 「仕方ないだろう」 俺は推理が得意だ。相手の動きを観察してつい予想してしまう。 走っているという事は急いでいる、つまり大変な事が起こっている。リリスには引き戸の取っ手が付いている方から来た時はそのままの勢いで入り、反対側だと一度止まって入る癖がある。今回は勢い良く入って来た。取っ手が付いている方には図書室しか部屋が無いのでリリスは図書室から来たのだろう。だが、図書室で事件が起こったのなら廊下が多少なりとも騒がしくなるはず。だから友達と話していて聞いたのだろう、と俺は推理した。 「それでこそ、助手の私の認めた名探偵なんですけどね」 「『自称』助手だろう」 「葉菊さんが認めてくれたからいいんです!」 ……。あの人はいつも面倒な方へと物事をねじ曲げる。 「それで、大変な事って何だい?」 「そうですよ!あのですね…」 リリスが説明しようとした所に廊下から女の声が聞こえてきた。 「号外!号外だよっ!美術室で起こった謎の事件!詳しく知りたいなら、学校新聞『つりぎ』を読んでねーっ!」 リリスの「大変な事」とはこれのことだろう。俺は新聞を貰おうと外へ出る。リリスの話は無駄な話が多くて分かりにくいからな。新聞の方がより事実を知れる。(ちなみにその時、「帽子がない、帽子がない」と言っている庄太郎とすれ違った。つくづく変な人だ) 「日陰、一部くれないか」 俺はバッサバッサと新聞を投げている日陰へと声をかける。片付けが大変そうだ。 「おう!裕ちゃんじゃない。早速この事件に興味があるのかいっ?」 少し、と答えて新聞を貰う。 「この事件は今朝起こったできたてほやほや美味しく頂ける事件だよ!それに文化祭準備期間二日目だからみんな忙しくて邪魔しない筈だしさ」 「暇なのは私達ぐらいです」 「君達だって暇じゃないんだよ。実は葉菊先生が呼んでたのさ」 衝撃の事実が発覚。早く行かないと周りに迷惑がかかる。そこに丁度よく呼び出しの音がなる。 『ぴんぽん…ガー…ん。あーあー、…ガー…赤空葉菊…ガー…の黒塚裕と…ガー…小城リリス、私が呼んでいる。至急放送室に来なさ…ガー…いと何かに躓いて…ガー…っ飛ばしてし…ガー…です』 大音量で放送が響き渡る。その後、何かが割れる音がした。俺達は過去最高の勢いで放送室に向かった。 がらっ、と放送室の扉を開けると放送室の全ての机(と言っても二つしかないのだが)がひっくり返されていた。ちゃぶ台返し。その真ん中に汚さなど全く気にせず、赤空葉菊が足を組んで座っていた。 肩につくぐらいの黒髪。西洋から取り寄せたという赤い宝石の耳飾り(「ルビーのピアス」だと赤空葉菊は言っていた)を右耳にしていて、体型ははかなりいい。この人の職業を予想して歌手などと言う人はいるだろうが、教師と言う人は誰もいないだろう。そしてかなり荒っぽいので最強反面教師とか陰で呼ばれている。 「遅いじゃないか。二人とも一体どこほっつき歩いてたんだよ」 「これでも充分早いと思いますけど。葉菊さんはどの位の速さで来れば気が済むんですか」 「五秒」 軍人さんも驚きの速さだ。 「まあ、今日は許してやる。機嫌が良いからな」 「機嫌がいいって…何があったんですか」 「今日の事件を解明しろ」 「唐突です」 赤空葉菊は俺の質問を無視して、勝手に話し始めた。 「私は推理小説は好きだけど、解くのは嫌いなんだ。だから名探偵、お前が解いて私に教えろ」 「事件とはこれの事ですか」 俺は持っていた新聞『つりぎ』を見せる。 「うん、それそれ。美術室の立ち入りは私が許可する。じゃーな」 赤空葉菊は学校新聞『つりぎ』を引ったくり、放送室を出て行った。 「………」 前々から思っていたけど…なんて強引な人なんだ。 「お困りかいっ?」 「きゃあ!日陰さん、驚かせないで欲しいです!」 「飛鉈家は忍者が先祖だからね。驚かせるものなのさ!」 ばっ、と日陰は窓(ここは一階だ)から入ってきた。 「忍者は驚かせる人さんじゃないです」 「あはは。細かい事は気にしない!」 丁度いい。日陰に事件の事を聞こう。 「赤空葉菊の話は聞いていただろう?だから事件の説明を頼む」 「了解っ!と言っても単純な事件なんだよね。ただ最近西洋から入ってきた「ぺんき」が美術室にぶちまけられただけ。ま、他の話は美術室に言ってから!百聞は一見に如かず、だよっ!」 新聞はどうした。 [次へ#] |