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悪戯書き集
最上の引力
赤空核(あかぞらさね)
チート使い。
多々角円(ほぼまるまどか)
超能力者。


「引力だとか重力だとか、そんなものは俺には効かないぜ」
ニヤリと笑った彼は軽く地面を蹴って空へと跳んだ。僕の攻撃を受けているにも関わらず――だ。
「ま、大方重力を操る能力って所だな」
まるでそこが地面であるかのように彼は空中を歩く。そしてその歩みは僕との距離が一メートルに届くかというところで止まり、彼は地面に降り立った。
「き、君は一体……!?」
目の前の出来事が信じられず、僕は無意識に後退りしていた。それに気がついた彼は更に笑みを深める。
「俺を恐れているのか。馬鹿ではないようだな」
「お、恐れてなんか……ッ!」
「本能に従うのは別に悪いことじゃあないさ。だが、虚勢を張るのも悪いことじゃあない」
小さな子供に分かりやすく教える様に言った彼の言葉は、甘い砂糖菓子の様に体に染み込んで行ったが、同時に理性の部分では苛立ちを感じた。けれども体は理性に反して動けなかった。
「多々角……だったか。お前、俺の部下にしてやっても良いぜ」
彼はここでようやく年相応な、無邪気な笑顔を見せた。僕はそれで我に返って飛び退いたが、何故か彼との距離は全く変わらなかった。
「部下は嫌か、なら相棒でも良いぜ。お前はなかなか強いみたいだからな」
「……嫌だね」
汗が一筋、滴り落ちた。
おそらく彼は機嫌を損ねて僕を潰しにかかるだろう。彼に能力が通じないのをたった今見せつけられたばかりだけれど、まだ負けると決まった訳じゃあない。僕は次に来るであろう攻撃に備える。
「フフ、それで良い」
だが、彼はその場から動こうともしなかった。
「忠誠心も無く簡単に従うようなヤツはいらん。お前の様なヤツを屈伏させてこそ信頼出来る」
長ランを翻して、彼は校舎へと歩き始めた。
「人外が多いとは聞いていたが……面白そうな学校じゃあないか」
「ま、待てッ!」
僕も彼を追い掛けて校舎へと向かった。

2011/02/27

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