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悪戯書き集
すごろく・オランジェット
「なぁ御主人、すごろくやろーぜぇ」
そう言ってディロイが部屋の中に入って来た。
「チェティに向かって馴れ馴れしいですよ。消滅しろ」
「消滅!?その場から消えるんじゃなくて!?」
「まあ待てロット。後で私の夕飯になる運命なのだから付き合って情けを掛けるのも良かろう」
「御主人ーー!!」
ディロイががっくりと肩を落として膝をついた拍子に、彼が持っていた箱が床に落ちた。
「……すごろく、ですか」
「ディロイが初めから言っていたであろう。開けろ」
私は言われた通り、箱を開けた。ちなみに今までチェティは一歩動くどころか、長椅子に横たわったままである。
「俺と愉快な部下達が創ったんだよねぇ。どーよコレ」
あっさり復活したディロイがニヤニヤ笑ってこっちを見ている。褒めて欲しいのだろう、だが断る。
「やってみないと分かりませんね」
チェティに褒められる余地を残しておいたのを光栄に思え。……って、落ち着け私。
「……ふむ、四人用と書いてあるな。エタナーを呼ぶか」
突然聞こえた声に私は驚いて仰け反ってしまった。いつの間にか私の隣にはチェティが居て、すごろく板を覗いていたのだ。いつもの事ではあるが、毎回驚かされる。
「あれ、今出張中じゃ……」
確かエタナーは今隣国に出掛けていてこの城には居なかったはず。いくら彼がチェティを崇拝していても、ここに居ないのでは来れない。
「おい、エタナー」
「お呼びでしょうか、チェティ様」
「来たぁー!なんで、なんで旦那来れんの!?」
ディロイも私と同じ事を思っていたようで目を丸くしていた。
「……チェティ様の御命令は絶対だ」
「その割に部屋に入って来ないんですね」
彼は現れたはいいが、部屋の中ではなく相変わらず廊下に立っていた。部屋に扉が無く、見えるのでいつもは問題は無いのだが。
「……それが俺の戒めだからな」
「エタナー、早く入って来い」
「はい、唯今」
「戒め破っちゃった!」
折角格好良く言ったのに台無しだ!
「嬢ちゃん……戒めは破る為にあるもんだぜ!」
肩を叩かれてディロイの方を見ると、何故か彼がイイ顔をして親指を立てていた。
「裏切りを正当化したつもりですか。クソカスが」
メメタァ。ディロイを黙らせてから私はため息わついた。
「どうして此処にはこんな人しか居ないんでしょう……」
「君も大概だが」
チェティのその言葉でその後三十分はすごろくが始まらなかった。

2011/02/01

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