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悪戯書き集
魔界不思議市場
鉢植翔鹿(はちうえしょうか)
情報通の女の子。
深紀真優(みきしんゆう)
DQNネームの女の子。


「魔界って、存在するらしいよ!」
唐突に鉢植が言った。
「…まあ有り得なくは無いな」
地獄もある(らしい)のだから、きっと魔界もあるんだろう。私は否定も肯定もせずに鉢植の話を聞く。
「なんと、魔界にはびっくりな物があるらしい!」
「うん。で?」
「不思議な市場があるらしいっ!」
私の笑顔が引きつったのが分かる。相変わらず鉢植はウザったい喋り方をする。
「具体的には?」
「知らない!」
私の表情など知ったことではないのだろう、鉢植は私の様子に気づいちゃ居なかった。
「右肩と左肩、どっち外そうか」
「ごめんなさーい!でも情報あげるから許してー」
鉢植は私の脅しにも全くブレずににっこり満面の笑顔で居る。
「その市場は『い』が無いらしいよ」
鉢植の切ったスイカみたいな口の形がぱたりと閉じる。これが脅しの代わりの情報、らしい。
「意味分からん」
「だからー『い』が無いの!親友ちゃんのセリフで言うと『(身/実/味)が分からん』みたいなっ!」
余計訳が分からない。つまりは文字通り『い』を無くすのだろう。余談だが、親友ちゃんは私のあだ名だ。
「で、それが何だ」
「だぁーかぁーらぁー!『い』が無いって事で、魔界不思議市場の場所が分かっちゃうワケですよ!」
何の説明も無しだが、魔界にある市場とやらは「魔界不思議市場」が正式名称らしい。大体読めてきた。
「つまり『い』を無くせと」
「そうっ!」
「マカフシギチバ」
「変換すると『摩訶不思議千葉』……つまり、市場は千葉にあるのだー!」
「んな馬鹿な」
ワハハー、と謎の笑いをする鉢植に私は冷静にチョップをかます。
「い゛っ…!?」
「千葉が摩訶不思議って千葉県民に失礼だぞ。今すぐ千葉の人に謝れ」
「…あああ、千葉野人さんごめんなさーい…」
「個人名みたいに言うな」
「……でも、ちゃんと確かめた」
「何?」
そうなると話は変わってくる。鉢植は腐っても情報通、推論(またの名を妄想)は言っても嘘は言わない。
「千葉で摩訶不思議、と言うと夢と魔法と金の国ネズミーランドでしょ?」
「一つだけ凄く現実的なんだが。まあ、確かにな」
「その中で魔界不思議市場を探してみたら、本当に見つけちゃったー!」
てへ☆と可愛いポーズのような物をされた。
「土産」
「ぬんっ?」
「観光に行ったら友達に土産を渡すもんだろう。私は親友ちゃん…だしな」
「ええっ?そんなのナッシングだよ!」
「なら認めん」
私の強引な言葉に鉢植はしばらくぐぬぬ…と唸っていたが、突然にぱ、と口が切ったスイカみたいな形になった。
「不思議ってゆー、見えないお土産をア・ゲ・ル!」
「…………確かに頂いた」
こうして、土産を受け取る事により、また私の中の鉢植の不思議さが上昇した。

2010/04/05

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