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悪戯書き集
森の中の話@
オレは完全防備をして立ち上がった。
「じゃあ行ってくる」
「いてらー」
「悪いな」
オレはいーちゃんと零一に見送られつつ、森へ出かける。二人とも忙しいらしくてオレ一人だ。
途中校庭であっきーを見かけた。あっきーは体育教師で結構背も高くて筋肉も付いてるのにむさい感じがしない貴重な先生だ。26歳。
「彼岸華、森に行くのか?」
「ああ。実験の材料探し」
あっきーは何故かオレの事を彼岸華と呼ぶ。理由を聞くと魂の形がどうとか訳の分からない事を言ってきたので今は諦めている。
「一人でか?」
「いーちゃんも零一も藤夏ちゃんも用事があるってさ」
そう言うとあっきーは不安そうな顔をした。
「何でそんな顔するんだよ」
「一人で大丈夫なのか?」
迷ったりしないか不安なんだろう。ここの森は軽くディズニーランド位の広さはあるし。
「大丈夫だっつーの。知ってる道しか通んないから」
あっきーはまだ何か言いたそうにしていたが、オレは森へさっさと歩き出す事で会話を止めさせる。
迷う訳ない…と思っていた。
「……どうしよ」
途中で道を間違えたのだろうか、見覚えの無い場所に来てしまった。
携帯は落としたく無いので置いてきてしまった。今オレの手元にあるのは花が入ってる虫かごと虫が入ってる虫かご、虫網しかない。
腕時計は珍しく付けていたので時間を見るとまだ四時。出かけてから三十分は経ってるけど、探しに来るのはまだまだ先だろう。
「はあ…」
ここで待つべきか、道を探すか。
「ん?」
少し先の方に何か妙なものを見つけた。近付いて見てみると木の枝に赤い糸が括り付けられていた。目を離すと見失いそうな程細い。
どうしてこんな所にこんな物があるのだろう。
「…もしかして」
人の通った印!?
だとしたら、他の糸もあるかもしれない。それを辿っていけば森の外に出られるはず。
オレは目を凝らして糸を探す。
……あった。
一つ見つけるとどんどん次の糸が見つかっていった。
これで外に出られる。
ほっと安堵のため息を漏らしながら辿っていくと、唐突に外に出た。
だが。
「ここ、何処だよ……」
そこは学園でも学園の外の街でもなかった。

2009/04/23

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