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悪戯書き集
毛虫とゴキブリ話
「んー…」
零一は生物準備室の掃除のついでにクラゲの世話をしていた。そこに参津が入ってきた。
「やあ、マイケルも掃除かい?」
参津はわざとらしい口調でそう言う。
「ああ、ジョンソンもだろ?」
「そうだよ。マイケルはまたクラゲか。さっさと済ませちまおうぜ」
参津はほうきを取り出す。丁度その時、佳子が入ってきた。
「あ、零一君と参津君早いね」
おー、とか言いながら参津はほうきを押してゴミを集め始める。
「走んなよ、海水にゴミ入るだろ」
零一が参津が走っている左の方を見た時だった。
「ん?」
黒い塊があった。参津が走ってほうきに巻き込んでしまったのでよく見えなかったが。
「今何か黒い塊があったぞ。虫じゃねーか?」
「どーせゲジゲジの死骸じゃん?」
参津は黒い塊を巻き込んだまま走っているが、佳子がそれを止めた。
「ちょっと待って。ついでにゴミ集めるから見てみようよ」
参津は止まってほうきを持ち上げる。零一も気になって見てみた。
「……なにこれ?」
黒い塊は案の定虫だった。佳子がおそるおそる手を伸ばす。
「触るな!」
零一は突然大声を出す。佳子はビクッとして手を引っ込めた。
「触ったら駄目だ。毛虫だ」
毛虫はうぞうぞと動いていて、まだ生きているようだ。どうしようかと参津の居る方を見たが、参津は居なかった。
「ジョンソン…じゃなくて参津は?」
「悪いな、ここだ」
参津はそう言いつつ雨顧問を連れて来た。
「雨顧問先生、何とかして下さい」
雨顧問はやっと状況が分かったようで、ちりとりを掃除用具の中から取り出す。
「うん、分かったよ。たまに入ってくるんだよね、こういうの」
雨顧問はちりとりの中に毛虫をさっと入れた。
「あ、雨顧問ー、こっちにもいる」
零一がそう言うと参津も寄ってきてこんなことを言った。
「良かったじゃないか。恋人同士離れなくてな」
「……そうかなぁ?見ただけじゃ雄雌分かんないよ?」
佳子はそうツッコミを入れると掃除を再開した。
「きゃあああ!!」
佳子の悲鳴に零一と参津はばっと振り返る。佳子は涙目で二人を見ていた。
「ご、ゴキブリ……」
三人が近付く。そこにはゴキブリの死骸があった。
「生きている毛虫は怖くなくて、死んでいるゴキブリは怖いって何だかなぁ…」
雨顧問がちりとりの中に死骸を入れるのを見ながら参津はそう言った。

2008/11/01

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