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フレンとユーリは昔から気心が知れているからか、お互いがお互いの物を使っても気にしない。それは装備品だったり、タオルだったり、食器類だったり、様々だ。

「あ、わり、借りてっぞ」

「うん。あ、これユーリのか…間違えた」

「おー、別にいいぞ」

こんな会話は日常茶飯事である。最初こそ絶句していたパーティメンバーであったが、慣れとは恐ろしいもので、もう誰も気にせず流しているのが現状だ。

「名前書いときゃ間違わないでしょうが」

と言うのは、何にでも名前を書くリタの言葉だが、あの二人には通用しないだろう。例え名前を書こうが、きっと同じ結果が待っている。
そうやって慣れた時間が過ぎていったが、メンバーはまだ、彼らの真髄を見てはいなかった。



この日は男性陣・女性陣がそれぞれ4人部屋という割当てになった。
フレンとユーリは剣の手入れをし、レイヴンは風呂、先に風呂から上がったカロルは鞄の中身をチェックしている。ラピードは既に、ユーリの使うベッドの側で丸くなっていた。

「青年、フレンちゃん、お先〜」

濡れてぺたりとなった髪を拭きながら、レイヴンはバスルームから出てくる。タンクトップにハーフパンツ…その姿はまさしく…

「オッサンだな」

「おじさん、ですね」

「レイヴンオヤジくさい」

ユーリ・フレン・カロルが口々に言う。

「ヒドイ!おっさん傷付いた!」

しかもフレンちゃんまで一緒になって!とレイヴンはわめく。
最初こそ、シュヴァーン隊長という事でレイヴンに敬った態度をとっていたフレンだが、今となってはユーリ達のノリに乗っている状態だ。ユーリ曰く「フレンの次の目標はおっさんにタメ口」らしい。

「さーて、オレらも風呂入るかな」

パチン、と手入れをしていた剣を鞘に収めてユーリは呟く。そして入浴の準備を始めた。
レイヴンはカロルに肩を揉んで貰っている。
フレンも剣の手入れを終え、道具を片付け始めた。
そこでユーリから「あ、」と声が漏れる。

「どったの?青年」

「やべぇ、替えのパンツがねぇ」

「あーらら、ご愁傷様」

青年は1日ノーパン決定ねーと、レイヴンはニヤニヤしながら言う。

「全く…タオルや下着の洗濯は溜め込むなっていつも言ってるじゃないか」

そういう所も変わってないんだから、と言うフレンに、カロルは首を傾げる。

「ユーリ、いつも溜め込んでたの?」

「特にユーリが騎士団にいた時は酷かったな」

部屋は散らかす、風呂から上がればきちんと拭かずに床を濡らす、洗濯も溜め込んでからようやくし始めるからストックが足りなくなるetc...フレンはユーリの過去のだらしなさを暴露していく。

「フレーン、お前いい加減にしろよ!」

「本当の事を言っただけだろう?全く、少しはマシになったと思ったのに…」

「…信じられない」

もうちょっとで二人の言い合いが始まるか?!と思ったところで、カロルが心底驚いたように口を開いた。
それにフレンが尋ねる。

「何が信じられないんだい?」

「だって、ユーリいつもちゃんとパンツ洗ってたよ?」

「そういえばそうよね…タオルだっていつも自分の使ってたし…」

今まで、誰かに何かを借りたりした事のなかったユーリ。そんなユーリが洗濯物を溜め込んで、あまつさえストックも無いと言うとは、余りにも信じられなかった。

「…やれば出来るんじゃないか」

「いいんだよ、今はお前がいるんだし。つー訳で、パンツ貸してくれ」

「いやいや青年、いくらなんでもそれは…」

「まったく…仕方ないなぁ」

「貸しちゃうのっ?!」

まさか下着の貸し借りは無いだろう、と思ったレイヴンとカロルの思考は一刀両断にされた。それはもう、目にも止まらぬ速さで。
当の本人達は「何か問題あるのか?」という表情で二人を見ている。

「いやいやいや青年達、よーっく考えようよ」

いくら洗濯してあるとは言え、他人の下着をはいたり、自分の下着をはかれたりするのは嫌でしょうよ!とレイヴンは力説する。それにカロルも、うんうんと頷いた。

「レイヴンのパンツはくなんて、僕絶対ヤダ」

「おっさんの方こそお断りよ」

「オレだっておっさんのパンツなんかはきたかねぇ」

「右に同じく、かな」

「何でおっさんばっかり責められてるの?!理不尽!おっさん虐待!」

うるせぇ!と、ユーリは手近にあった本を掴み、思いっきりレイヴンの額目掛けて投げ付けた。見事にクリーンヒットしたソレは、うるさいおっさんを黙らせる事に成功したようだ。

「ったく…たかだかパンツでうるせぇな。コイツのだからいいんだよ。他のヤツの何か死んでもはくか」

フレンだから許せる・許してもらえる領域だと、暗に告げる。それはもちろん、フレンもユーリだから、という事も含まれている。
カロルは改めて、二人の信頼の深さを実感した。(信頼以外のもっと深い部分については、彼に気付く術はなかった)

「ったく、おっさんのせいで遅くなっちまったじゃねぇか…」

とっとと入っちまおーぜと、ユーリとフレンはバスルームへと消えて行った。







「って、青年達!何ナチュラルに一緒に入っちゃってんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ??!!」

「さっきからうるっさいのよ!!」

ユーリの攻撃から復活したのも束の間、余りの騒がしさに部屋に乗り込んできたリタの魔術により、レイヴンは再び沈む事になったのだった。



END



初フレユリ小説!
フレユリっていうか下町っていうか…
一緒か。



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