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美食日記
03


人のいない道を、無言のアルに手を引かれ早足で歩く。


「アル」


呼んでもアルは答えない。


「アル。怒ってるの?」


そう聞くと、アルは立ち止まり、こちらを見ないまま低い声を出した。


「怒ってないよ」

「じゃあ、どうしたの?」


「…」


大抵のことは笑ってすませるアルだ。

しかも、こんなに静かになることは珍しい。


私はアルの前に回り、顔を見上げた。


「…俺、名前は変な奴だから、ライバルなんて出てこないと思ってたんだ」

「へ?」


ライバル?なんの?


「君についていけるのは、君と一緒にいれるのは、俺くらいだと思ってた」

「えーと…今怒るとこ?」

「でも、あの転校生が来てから、君はちっとも俺と一緒にいてくれない」


転校生…ヨンスくんのことか。


「嫌なんだ。名前の隣に誰かがいるのは」

「…?」

「一緒に放課後帰るのも、食べ歩くのも…デートするのも…名前の幼なじみは、俺じゃなきゃ嫌なんだ!」


アルが私の両肩を掴み、必死な顔でまくしたてる。


「君はうるさい俺なんかより、耀の方が好きかもしれないけど、俺は…俺は、」


そう言って、アルは項垂れてしまった。


「…アル」

「ごめん…俺」


泣きそうな声を出すアルの頭を優しく叩く。


「アル、私はね。アルと一緒にご飯食べてる時間が大好き」


アルの頭がピクリと動く。


「アルは、周りがどんなに引いてても、一緒に美味しそうに食べてくれる。私が叫んだら、一緒になって笑ってくれる。デートのフリだってさ、あんなにノリノリで楽しそうにやってくれるのアルだけだよ」

「はは。まあね」

「アルと一緒に食べると、いつもの何倍も美味しい。アルと一緒にやるといつもの何倍も楽しい。アルと一緒にいる騒がしい時間が、私は好き」


アルがゆっくり顔を上げる。

顔を見合わせて苦笑する。


「そりゃ、私だっていっぱい友達欲しいけど…一番の親友は、私の幼なじみはアルだけだから!」

「…うん」

「納得した?」

「うん」


アルが少しはにかむ。

笑い返して、今度は私が手を引いた。


「じゃあ、一緒にフランの店寄って帰ろ!」

「OK!」


すっかり元気を取り戻したアルと、一緒に笑いながら歩く。


(っていうか、なんだ。かまってないから拗ねてただけかぁ。よかった)


隣でニコニコするアルの顔を盗み見る。


(一番仲良いのはアルだよ。どう考えても)





―耀の方が好きかもしれないけど…―








(…なんで耀さん?そりゃ耀さんのことも好きだけど…ん?)


耀さんの顔を思い浮かべると、またお腹が痛くなった。


「…アーサーの呪い長いなぁ…」

「呪い!?や、止めてくれよ!怖いじゃないか!」

「今度解いてもらおう」















カリカリポテトは

アルの担当だからね










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