美食日記
04
結局、中を追い出されバルコニーで、耀さんの隣にアル、私の隣にアーサーの四人で何故かテーブルを囲んでいる。
「って、なんで耀と一緒に飯食ってんだ?ああ?」
「うっせえある眉毛」
アーサーが耀さんを睨む。知り合いかよーまたかよー。
ってか、あれぇ?私の知ってるアーサーさんはこんなヤンキーだったっけ。
「おっ。カツサンドか。俺にも一つ」
「私の食べ物に触るな!腐る!」
「いってえ!」
アーサーの手を強く叩く。
危ない危ない。カツサンドをアーサーから遠ざけ、早めに食べた。
「おおいひー」
「…相変わらず食べてる時だけは天使だな」
「こんな食う天使嫌ある」
「にやにやしないでくれ気持ち悪いよアーサー」
ちょっと酷い言葉が聞こえたけど耀さんなので気にしない。
カツサンドを堪能し終わる。
「お前、昔のお兄ちゃんとは仲良かったんじゃないあるか」
「名前、耀にどんな話したんだよー」
「にやにやすんな」
私はため息をついて、なるべく視界からアーサーを消した。
「仲は良かったんです。あれは遠い昔のことです」
「10年前かな」
私は幼なじみのアルと、近所に住んでいたアーサーお兄ちゃんとよく遊んでいた。
三人は仲が良くて、私はアーサーが淹れてくれる紅茶が大好きだった。
10年前、アーサーが親の都合で引っ越してしまうとなったとき、泣きじゃくった私に、アーサーは初めて、趣味だと言っていた手作りお菓子をくれた。
嬉しくて、アーサーがいなくなってから思いっきり頬張った。
それが全ての始まりだった。
「その頃から味覚と嗅覚が人より何倍も良かった私は、アーサーのスコーンを食べたあと、3日寝込みました」
「その後、その反動か名前は美味しい物に異常にこだわるようになったんだ…」
涙ながらに私たちは語った。
「…お前、あれを食わせたあるか。ひでーある」
「い、いや、それは絶対俺の菓子のせいじゃない!何か違う物がだな」
「だからアーサーとは良い思い出ばっかりだけど、アーサーのことは大嫌いになっちゃったんですよ」
「だ、大嫌い…」
アーサーがショックを受けている。
「と、いうわけで。私は耀さんと食べ歩いて帰るんで。さよなら」
「待て待て待て!」
立ち上がり、帰ろうとすると立ったアーサーに道を塞がれた。
「なんで耀と一緒にいるのか聞いてないぞ」
「そうだぞ!食べ歩きなら俺を誘ってくれよ!」
「これには深い事情があるの」
「なんだそれは。俺に言えないような事情なのか!?」
「言う必要が無いし」
「名前!俺は反対だぞ!俺もついていく!」
「そうだ!耀は女みたいな顔してるけど、結構タラシで」
「しつこい!!!」
私は叫んで、そのまま右足でアーサーの股間を蹴り上げた。
「ぐふぉっ」
「ひいぃっ」
「容赦ねーある…」
男性陣は青い顔をする。
「アル」
「な、なんだい?」
「お会計、よろしく」
「いいいイエッサー!」
素早く敬礼したアルを一瞥し、しゃがみこんだアーサーを蹴り、耀さんに振り返った。
「さ、続き行きますか!」
「爽やかぶっても無駄あるよ」
アールグレイと共に
「そういや、名前に初めて教えたのはアールグレイだったなあ…」
「君、もう少し寝てるかい?」
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