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美食日記
01


「あ!菊さん!」

「おや、名前さん」


すっかり顔馴染みとなった菊さんに近寄り、足下のポチを撫でる。


「そういえば、今日はみたらし団子を作ってきたんですが…」

「マジですかぁあああ!!菊さんマジパねぇっすぅうう!」

「…その口調は弟を思い出すのでやめてください」


串に刺さった団子にかぶり付く。


このトロリとしたタレの甘みがたまらない。


「ん〜!!このモチモチ感!やっぱり菊さんはよくわかってますねー!!」

「恐れ入ります」

「今日もごちそうさまですっ!」

「いえいえ。名前さんは美味しそうに食べてくださいますから、こちらも作りがいがあります」

「もうホント菊さんお嫁に来ませんか?」

「性別上、無理があるかと思われますよ」


最初はあたふたと慌てていた菊さんも、慣れたのか切り返しが冷静になってきた。


「あ、でも一番の嫁候補はやっぱりあの人かなぁ…」


ニヨニヨと耀さんの怒った顔を思い浮かべる。


「ところで、菊さんって一人暮らしですか?」

「何故ですか?」

「いや、さっき弟さんのお話、されていたので…」

「ああ…」


菊さんが空を見上げて、目を細めた。


「…兄弟はたくさんいました。ですが、兄とそりが合わなくて…出てきてしまったんですよ」

「…そうなんですか…」


なんとなく、それ以上聞いたらいけない気がして、黙りこんだ。


すると菊さんがニコリと笑んで立ち上がった。


「さて、そろそろお昼にしましょうか」

「あ!菊さん、ご一緒にどうですか?」


菊さんが首をかしげる。


「近くにとっても美味しいお店があるんです!いつものお返しに、奢りますよ!」

「いえ、結構です」

「え…でも…」


私がうつ向くと、菊さんはまたにっこり笑って言った。


「私が奢りますよ。そのかわり、その美味しいお店に案内してくださいますか?」






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