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美食日記
02


「ん?」


公園の中をしばらく探していると、ベンチの下で、白いモコモコした犬が寝ているのを見つけた。


「あの!」


犬を抱えて男性に見せると、男性はホッとしたように笑った。


「ぽち君、何処にいたんですか」

「ベンチの下で寝てましたよ」

「…飼い主と似るものなんですね」


男性はペコリと礼をした。


「見ず知らずの爺を助けて下さって、ありがとうございました」

「気にしないでください!私も暇だったし」

「お礼と言っては何ですが…」


男性はゴソゴソと着物の袂から風呂敷を取り出した。

男性がベンチに座り、私も座る。

風呂敷を解いて、出てきた重箱を開けると…、


「…おはぎ、ですか」


私の喉がゴクリと鳴った。


「はい。おやつにと持って来ましたが、余ってしまったので…よろしかったら如何でしょう?」

「わ、私が食べてもいいんですか!?」

「え、ええ、勿論です」

「じゃ、じゃあ…いただきます」


両手を合わせて、そーっとおはぎに手を伸ばす。

一つを手に取り、パクッと一かじりした。


「ふ、ふおぉおおおおおお!!!!」


「ど、どうかしましたか?まさか、入れてはいけないものを…」

「ふ、ふあぁ…っ。なんなんスか、これ…っ」

「え…」


いつの間にか、私の目からは涙が溢れていた。


「この素朴で優しい味わい…。亡くなったおばあちゃんが昔作ってくれたおはぎに、酷似してます…」


男性は泣きじゃくる私におろおろとしていた。


「あのっ!」

「は、はい!」

「もう一つ貰っていいですか!?」

「ど、どうぞ!」


もう一つのおはぎも、じんわりと口の中に広がった。


「ん…。これは…相当いい小豆を使ってますね…。モチ米も弾力があって、モチモチしてて…。作業行程がしっかりしてるんですね!」

「お、恐れ入ります」


私ははぁ、と息をついて、男性に頭を下げた。


「ごちそうさまでした」

「いえ、喜んで戴けたようで」


にっこりと笑う男性の目を見て、真剣に言う。


「あの、お名前、教えていただけませんか」

「?菊、と申します」

「菊さん、ですか…」


私はさっきのおはぎの味を思い出してにやけた。


「よかったら、また、おはぎご馳走になってもいいですか?私、ファンになっちゃいました」

「そんなことでしたら、いつでもどうぞ。この近くに住んでいますので、また見かけたらお声をかけてください」

「はい、是非!」

「では…」


菊さんは、ペコリと礼をして、帰って行った。






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