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反対色



 向かい合って何かを話している恋次と雨竜を見つけたのは、偶然だった。
 一見反りが合わなさそうな二人に見えるが、実はそうでもないらしい。それどころか、一護には遠慮なくものを言う二人が昔ながらの友人のようにさえ見えた。
 それが、何故だかどうしようもなくもやもやすると気付いたのは、いつだっただろうか。いや、もやもやするだけならばまだいい。だが、恋次を阿散井と呼び捨てにしている雨竜に、名字呼びは俺の特権だっただろうと無意識の内に思った時は、軽く自己嫌悪した。自分は、雨竜の恋人ではないのに。
 そんなことを考えながら、一護は仲良く向き合っている恋次と雨竜の傍を平常心を心がけつつ通り過ぎようとする。しかし、そんな一護の努力を踏みにじったのは、他でもない恋次だった。
「おっ!いいとこに来たな黒崎!お前もクイズに参加させてやるぞ!」
 なんて間の悪い奴だ。
 一護は思わず溜息を吐きそうになった。
 だがそんな一護を知ってか知らずか、恋次はさらに言葉を続ける。
「第一問!!俺のこの斬魄刀、蛇尾丸の名前を当ててみろ!!」
 正直に言うなら、今の一護にとって恋次の斬魄刀の名前など道端に落ちている小石程度にはどうでもいい。
「えーっと……出っ歯丸?」
「バカか!!!」
 せっかく興味もないクイズに答えてやったのに馬鹿とは何事かと一護は思ったが、喚く恋次に突っかかっていく雨竜を見た途端、何も言えなくなった。
 あのポジションはずっと、自分のものだったのに。
 胸の内に湧き上がってきた言葉をなんとか押し止めて、一護は言い合いを続ける二人に気付かれぬよう、小さく自嘲の笑みを漏らした。



end

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あきゅろす。
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