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指先の愛



 石田が、本当は俺にあんまり好かれていないのではないかと思っていることは知っている。それは不審からくるものではなくて、不安からきているということも俺はわかっている。
 確かに俺たちは男同士で、結婚もできなければ子供もできない。きっと世間には認められないのだろう。
 それでも俺は石田以上の奴なんていないと思っているし、石田以外なんて興味がない。石田が思っているよりもずっと、俺は石田のことが好きだ。だから、不安になる必要なんてないのに。
「なあ」
 俯きがちになって隣を歩く石田に、俺は話しかける。
「なに?」
 素っ気ない応え。でもそれが嫌だとかつまらないだとか思ったことはない。石田はこんな些細なことでさえ俺に嫌われるのではないかと恐れているが、たとえどんなに素っ気なくても俺に応えてくれる石田が好きだ。
「好きだぜ」
「なっ……!」
 俺の言葉に真っ赤になってこちらを見る石田が愛おしくて、俺は自分の指に真っ白で綺麗な石田のそれをそっと絡めた。
 こういうとき、俺は実感する。石田が俺を好きな以上に、俺は石田のことが好きなのだ。



end

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