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欲張り(近土)
※銀魂で近土です
※甘くないです
どうして信じてくれないのかなんて理由は百も承知だ。俺がはっきりしないから。これに尽きる。
お妙さんへの好きとお前への好きは違う、愛してるのはお前だけだなんて都合のいいことを言っているからだ。物分かりの良いトシはそれに納得したフリをする。俺は、トシが心の中で納得していないのを気づかないフリをする。
不毛だと、自分でも思う。どうにかしなければと思いながら、俺はどうにも出来ずトシの優しさに甘えている。
「トシ、仕事はもう良いから、こっちに来い。」
「良かねぇよ。期日迫ってるし。」
「良いって。」
「ったく、しょうがねぇなぁ…。言いたくねぇが、アンタの分もあるんだからな?」
そう言いながらも、仕事をする手を止めて俺の言う通りにしてくれる。トシは俺の言うことは何だって聞いてくれる。時々怖くなるくらい、自分を犠牲にすることをいとわない。
これが、俺を付け上がらせる原因かもしれない。何をしたってトシは受け入れてしまう。だから、何をしたらトシが傷つくのかなんてわからない。そのボーダーラインが見えないから、怖い。
どれだけ好きだって言っても、どれだけ体を重ねても、俺の気持ちを信じてくれない。ただ、どこか冷めたような目で、俺も好きだよと言う。そして、トシはそれに満足している。いや、満足していると、自分に思い込ませているようだ。
悪いのは俺で、傷ついてんのはあいつ。なのに俺は被害者のような顔をして、トシの細い腰を抱き寄せる。
「寂しかった。」
「言ってろ。」
「ほんとだって。最近二人きりで過ごすこともなかったし。」
「俺と二人になれなかったくらいで、アンタが寂しがるわけねぇだろ。」
トシはいつもの口調で言う。いつ見ても綺麗な顔。それが余計に表情を隠して、感情が読めない。
やきもきする。でも、やっぱり悪いのは俺だ。何度考えたって思考は同じルートを辿る。堂々巡り。苦しいのは当然の報いだ。
あれもこれも全部欲しいと思ってしまう、俺の欲望への報い。
「酷いな、トシは。」
「…酷いのはどっちだよ。」
トシは澄ました顔で煙草を吹かす。煙が部屋に漂って、またトシの表情が霞んで見えた。
ああ、そうか。俺は、トシが煙草に異様に執着する理由が何となくわかった。トシは物分かりが良すぎるが故に沢山のことを感じ、我慢してきたんだ。悲しみも、苦しみも、全部。ひた隠しにしてきたんだ。煙草はそれを助ける道具の一つなんだろう。
俺とは大違いだ。こんな男が俺を独占することを渇望していると思うと、やはり手放せないと思ってしまう。
「好きだよ、トシ。」
「はいはい。」
「信じてねぇだろ。」
「そんなことねぇよ。俺も好きだぜ?近藤さん。」
またあの目だ。
どうにも切なくなって、俺はトシを抱き締めた。
「愛してる。お前が思ってるよりもずっと。」
トシは少し体を震わせたあと、大きくため息をついた。
欲張りで、優柔不断で、自惚れで。子どもみたいな俺を、いつかお前は捨ててしまわないかと、怯えている。だから、こうやって繋ぎ止める。ずるいと思いながらも、甘い言葉を使って。
end.
こういう、ずるい近藤さんも好き。一歩間違ったらヤンデレになってしまいそうな感じで。
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