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仕事人間な彼へ(銀土)
 


※銀魂です
※土方出てきてません
















寒い夜だ。すきま風が指先を冷やしていく。外では雪になりきれない、すこぶる冷たい雨が降っている。雨音と時計の秒針が、部屋に響いている。
こんな夜は、なんだかセンチメンタルになるものだ。

なぁ知ってるか。煙草って体温を下げちまうんだって。
俺の脳内に浮かぶ煙草をくわえたあいつにそっと囁く。

こんな夜でさえ、あいつは仕事してるんだろう。それもあいつの仕事だけじゃなくて、ゴリラやドS王子くんのやつまで。どうしてあんなに働いてんだか。たまには勝手にサボっちゃえば良いのに。俺と一緒に。


そう思って、俺は携帯を手に取った。電話は確実に出てくれないことは知っている。だから、メールしてみようと思う。あいつの好きそうな映画を口実に、誘い出してやろう。

とは言っても。


「あれ…なんか照れるんですけど。」


お前が見たいって言ってた映画のチケットあるんだけど一緒に行かねぇ?と、これだけで良いはずなのに、俺の指は勝手にあいつへの愛を語り出す。

甘えるのが壊滅的に下手くそなあいつが心配なんだ。どうせまた色んなこと一人で抱え込んで消化すんのに必死になってんだろ。甘やかしてやりたくて仕方がない。

だから、いや、だからって…。



「なんでお誘いメール作ろうとしてんのに愛のポエムが出来上がっちゃってんだよ。俺ったらどこで才能爆発してんだ。」


携帯の画面には愛のポエムが映し出されていた。これがなかなかどうして素敵なのだ。


「あれ、これ送っちゃった方が良くね?俺の熱い気持ち伝わっちゃうんじゃね?やべ、俺の才能ったら隅に置けないな。」


きっと夜に酔っていたのだ。俺は送信ボタンを押したあと、満足して眠ってしまった。






朝日が差し込んでいる。と思っていたのは俺だけで、太陽は既に真上にあった。
また昼まで寝てしまった。新八も神楽も居ない。何処かへ遊びにでも行ったんだろう。
俺は昼でも凛と冷えた空気を思いっきり吸った。

ふと、携帯が光ったように見えて、手に取った。

そして俺は思い出した。


「あ、あれ…あのメール…送ったんだっけ…?」


背中がゾクッとした。まずい。あんな恥ずかしいメール、どうして送ってしまったのだろう。
改めて確認しようかと思ったがやめた。読んだところで胃がキリキリすることは目に見えているからだ。

携帯を開くとメールが一件着ていた。恐ろしかった。きっとあいつだ。それ以外あり得ない。

どうか俺の純粋な気持ちだけがあいつに伝わっていてくれ、と願いを込めてそのメールを開いた。


「…へっ?何これ…。」


そこには俺が想像していたものとは全く違う文面が書かれていた。


『誤字脱字が多すぎる。やり直し。』


どこまで仕事人間なんだあいつは。やっぱりメールなんてまどろっこしいことは似合わない。俺は無意識のうちに、屯所に乗り込むために上着を羽織った。








end.









夜ってやつには悪魔が棲んでいる。深夜のメールは黒歴史になる確率が高いです。
そして相変わらず土方が出てこない。あれ、今回名前すら出てないぞ。










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あきゅろす。
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