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唇が触れるだけで(太克)
※きちめがです
※甘ったるいです
音楽は好きだ。でも、少し離れたくなる時がある。良い曲を作らなきゃ。そんなプレッシャーから解き放たれたいときがある。
きっと良い曲は作ろうと思って作れるわけじゃないんだ。自分の作りたいときに、作りたい曲を作る。そんなとき、良い音楽っていうのは生まれる。案外そんな単純なことかもしれない。
「克哉さん。」
「どうしたの、太一。曲作りはもういいの?」
「なんかうまくいかなくて。インスピレーション湧かないってやつ?」
克哉さんは俺の清涼剤だ。煮詰まってどうしようもなくなったときに克哉さんに触れると心が解れる。
優しい表情。柔らかい声。克哉さんの匂い。全部、俺を癒していく。克哉さんは優しいから、俺を全部受け止めてくれる気になる。
「克哉さん。今からラブラブしたいって言ったら、怒る?」
「えっ?な、何言ってるんだよ、太一…。」
「克哉さんに触ってるとね、曲のイメージが湧いてくるんだ。甘くて、優しくて、溺れそうになるくらい幸せな詞…。」
ソファーに座っている克哉さんに横からぎゅうっと抱きつく。克哉さんの匂い、体温、呼吸、鼓動…全部伝わってきて、体の芯がじんわり暖かくなる。
「ねぇ、克哉さん…」
「…駄目だよ、太一。明日は早いし、今日は我慢。ね?」
俺のほうに振り向いた克哉さんは少し困った顔をしていた。そんな顔も俺にはひどく魅力的だ。かわいいなあ、克哉さん。
でもこんな風に中途半端に昂る俺におあずけは少々酷だった。
「そんなこと言わないでよ…一回で我慢するから!」
「だぁめ。そんなこと言って、太一が我慢できるなんて思えないし。」
呆れた声で笑われた。本当は無理矢理にでも押し倒したいけど、克哉さんも毎日忙しいし、無理強いするのは気が引ける。だから、俺は待てと言われた犬のようにただ克哉さんの言葉に従う。
克哉さんはそんな俺を見ても、しょうがないなぁとは言ってくれなかった。少し残念だったけど仕方がない。俺は克哉さんにくっついたまま、この欲求をどう消し去ろうかと頭を悩ませていた。
「ふふっ、太一ったら…ほんと犬みたい。かわいい。」
「ああ、もう!からかわないでよ!こんなの…克哉さんだから、従うんだよ?」
「あははっ、太一はいい子だなぁ。いい子にはご褒美あげなくちゃね。」
克哉さんは抱きついている俺の腕をほどいて俺に向き直ると、触れるだけのキスをした。それも、何度も。決して深くはならないキスは、やがて唇だけではなく、頬や鼻や額にまで散らされた。
なるほど、これはこれですごく幸せだ。勿論克哉さんと深く繋がって快楽に溺れる表情を見たり、うわ言みたいに俺のことを好きだって言う声を聞くのはこの上ない幸せだけど、こんな風にじゃれあうのも悪くない。
キスをする度に浮かべる悪戯な笑みも、俺の頭をわしゃわしゃと撫で回す手も、全部俺の幸せのもとだ。
「克哉さん、くすぐったいよ…っ」
「じゃあ、もうやめる?」
「やめない!でも、今度は俺が克哉さんにキスする!」
克哉さんに触れる度に優しい気持ちになれる。
俺は、いつの間にか頭の中に暖かい旋律が流れているのに気づく。それは克哉さんが俺に笑いかける度に確かなものになっていく。
たまにはこんな、穏やかな曲も良いかなぁ。でもこの旋律には、みんなの前で歌うにはちょっと恥ずかしいくらいの甘ったるい詞がよく似合う。
この曲は俺と克哉さんだけのものにしてしまおうか。そんなことを思いながら、俺たちは子供のようなキスを何度となく繰り返した。
end.
太一と克哉をちゅっちゅさせたかっただけです。
太一が好きだ。実は一番好きだ。
だってあいつの攻め声かわいいんだもん。年下攻め萌えは太一に出会うまでは平行線でしたが、今や萌えが爆発しそうです。
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