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ゆらゆら揺れる(近土←銀)
 



※浮気ものです
※土方くんが微妙にビッチくさい気が
※というか優柔不断です
※間男銀さんが不憫です



大丈夫そうな方はどうぞ。

















あんたが作った仕事なんだけどな、なんて言ったら、あんたは困るだろう。あんたの情けない顔なんて見たかねぇから今まで何にも言わなかったんだ。でもなぁ、近藤さん。俺だって仏様じゃねぇんだ。こう何度も何度も同じことされちゃあ、さすがに我慢できねぇんだわ。


「トシ、ちょっと出掛けてくる。」

「どこに?」

「すまいる。」

「ああ、そう。気ぃつけてな。」


この会話を何度繰り返しただろう。俺は寝る間も惜しんで仕事してるってのにさぁ。最初は大将はちまちました仕事なんかせずに自由にいてくれりゃあそれでいいと思ってた。どんと構えて、隊全体に安心感を与えるような。つまり“局長”っていうのが存在することが大事なんだと。
でもそれは、真選組としての話だ。今は違うだろう。まあ書類仕事はいい。でも俺のこと一番愛してるとか言っておいて、さすがに「他の女のところに行ってくる」はないと思わないか。浮気も夜遊びも我慢して近藤さんの仕事を黙々とこなすのが良妻賢母だとしたら、そんなもんクソくらえだ。

とは思いつつ。


「仕事、終わらせるか。」


何にも言わず、何にもせず、やっぱり黙々と仕事に取りかかる自分にうんざりする。所詮思ってるだけでどうしようもねぇんだよな。我ながら情けねぇ。惚れた弱味ってやつか?だったらなおのこと恥ずかしいわ。


「はぁ…。」


期日が差し迫っている分はとりあえず終わった。一つ、深いため息をついて天井を見上げた。思いの外静まり返った部屋。虚しさが込み上げた。

俺、今どんな顔してんだろう。随分と情けない顔してんだろうな。
こんな俺の顔を見たって、近藤さんは何とも思わないのかもしれない。俺、何考えてんだろう。女々しくて堪らねぇ。

落ち着かなくて煙草に火をつけた。紫煙が辺りを漂う。
煙が部屋に籠っているうちに、不意に携帯が鳴った。反射的に電話に出ると、間の抜けた声が耳に届いた。


『ああ、土方くん。珍しいな、俺の電話に出てくれるなんて。』

「あ?あぁ、なんだ万事屋か。切るぞ。」

『ちょっと待った!何でだよ!せっかく繋がったと思ったのに!』

「ったく、うるせぇな…なんか用事あんのか?どうせくっだらねぇことだろ。切るぞ。」

『だから待てって!お前は二言目には切るで困るよほんと!うまいこと言いやがって!』


面倒臭い。面倒臭すぎて携帯を握り潰したくなった。
いつもならとっくに切っている。だってうざいから。うるせぇから。きもいから。
でも、それでも、俺がまだこいつと話してる理由。そんなもの…当て付けに決まってる。見せつける相手は生憎この場にいないが。


「じゃあ早く言え。」

『あれ…なんか今日素直…』

「やっぱり切る。」

『っだあぁ!待った!言うから!』

「だから早く言えって。」

『あのさ、今から飲まねぇ?』


やっぱりくだらない。と思った。いや、思うはずだった。でも、心のどこかで魅力的に感じたのは嘘じゃない。
とは言っても、今から出掛けるなんて現実に考えて無理な話だ。


「無理だ。俺と飲みたいなら屯所まで酒とマヨネーズ持ってこい。」

『言うと思った。』

「はぁ?」

『だから、』


部屋の外に気配を感じた。振り向くと、あの特徴的な髪型が目に入った。


「おま…っ!」

「来ちゃった。」


来ちゃった、じゃねぇよ。なんだそれ。可愛くねぇよ。てか今まで完全に気配を消してきやがるなんて、わけわかんねぇ。


「な、んで…」

「さっきさ、お前のとこのゴリラ見たんだよ。すまいるで。」

「…っ、」

「ゴリラがここにいるなら、土方くんは今一人だなぁって思って。…なんて顔してんだよ。そんなに俺が来たのが嬉しかった?」

「っ、馬鹿、ちげぇよ。」


俺は混乱してるだけだ。そうに決まってる。何揺れそうになってんだ。馬鹿じゃねぇの。
それに、鼻の奥がツンとするのは、そういうんじゃない。違う。

ご丁寧にマヨネーズまでほんとに持ってきやがったこいつの優しさに当てられそうだなんて、そんなの何かの間違いだ。

万事屋は屯所の台所からとってきたであろうグラスに、持参した日本酒を注いだ。前に世話してやった依頼主から貰ったんだそうで、至極満足げだった。
俺は、万事屋が酒を注ぐその動作をぼんやりと見つめていた。

期待していたより美味い酒を傾けていた。いつもみたいな口喧嘩もせずに静かに酒を酌み交わすなんて、違和感がありすぎて気持ち悪い。酒に映る自分の顔が目に入った。やっぱり情けない顔だった。
ふと、視線に気づく。万事屋が、俺を見ている。ただじっと、茶化すこともせずに。


「やっぱりなぁ、来てよかった。」

「何が?」

「こんなチャンス、もうねぇだろ。」

「何の話…」

「こんなに弱った土方くんを口説かないなんてあり得ないだろ?」


万事屋の腕が首に回される。そしてぐっと引き寄せられて、気づけば腕の中にいた。
その優しい腕に甘んじていたのは、酔っていたからだ。それ以外に理由なんて、ない。


「土方…。」

「っ、ちょ、馬鹿!」

「ゴリラだから諦めたのに、なんでそんな辛そうな顔してんの?お前。」

「そんなこと…っ!」

「なんで寂しくてたまんねぇって顔してんの?俺ならそんな顔させないのに。」


こいつが俺に好意を持っていたのは知っていた。ただ、そんなものは冷やかしの類いだと思っていた。それなのに、俺を抱き締めるこいつの腕の強さに、俺はそれがそんな類いのものじゃない、本気なんだと感じざるを得なかった。


「馬鹿じゃねぇの、お前。つか、お前…最初からこれが目的で…っ」

「違う。最初はほんとにお前と二人で酒飲みたかっただけだよ。でもさ、自分の好きな奴が自分以外に傷つけられて辛そうな顔してたら、自分のもんにしたくなるだろ。」


肩に力を込められて、押し倒される。俺はその行為に、まるで現実感を感じていなかった。

特定の相手がいるのに、こんなこと許されるはずがない。それを言うなら近藤さんだって…。いや、そんなこと関係ない。でも、俺は近藤さんのキャバクラ通いは許してるだろ?

…許してる。違うな。嫌われるのが怖くて言い出せないだけだ。腹ん中じゃ、許してなんかない。


「万事屋…俺…。」

「何?誘ってんの?」


違う。違う。違うんだ。
でも、全力で拒否できないのは、俺の弱さだ。


「…そんなんじゃねぇ。」

「じゃあ…そういう気分にさせてやる。」


唇が触れ合うまであとどれくらいだろう。このままキスしてしまうんだろうか。
ここまで来ても他人事でいた。ただ、こいつの無償の愛は、心地よかった。

流される…そう思ったときだ。部屋の襖が勢いよく開いた。


「…っ、」

「こ、近藤さん!」


近藤さんだった。息を切らして、その場に立っている。目を見開いてこっちを見ていた。


「トシ…どうして…」


その声は思いの外部屋に響いた。万事屋はため息をついて俺から体を離し、近藤さんに向き直った。


「どうしてだって?おい、クソゴリラ。お前のせいだろ。お前が土方くん置いて遊び回ってるからだろうが。散々傷つけたまま放置しといて、傷つけられたみたいな顔すんなよ。」

「何言って…」

「自分は浮気しといて、土方くんが浮気したら駄目なんだ?勝手だね。もうさ、お前見てたらイライラするんだよ。今までお前に土方くん取られたんなら仕方ねえって思ってたけどよぉ…我慢できねぇ。宣戦布告だ。」


万事屋はそう言って部屋から出ていった。
部屋にはとんでもない空気が流れている。地獄かと思った。でもあいつは俺が言いたかったことを全部言ってくれた。


「トシ…。」

「俺の気持ち、あいつが全部言っちまったな。」

「…っ!」

「俺だって、あんたを独占したいって思ってんだ。正直あんたがあの女のところに行く度胸糞悪い。」

「ト、シ…お前…。」

「すまなかった。…いくらあんたにほったらかされたとは言え、あんなこと…っ!?」


不意に抱き締められた。そして耳元で「ごめんな…」と謝られた。
別れようと、告げられると思った。意思薄弱な俺は要らないと、言われると思った。それなのに近藤さんは、俺を抱き締めて泣いている。

馬鹿だよな。寂しいからって他の奴が差し伸べた手を、あっさり取ってしまいそうになる俺なのに、どうして抱き締められるんだろう。


「近藤さん…馬鹿だな…俺のために泣いてんのか?」

「俺は何にもわかってなかった…トシの気持ちも、お妙さんの気持ちも…。」

「…っ」


その名前に、つい心臓が跳ねた。あの女は何にも悪くねぇのに。


「お妙さんに言われたよ。私を嫉妬の材料にするのはやめてくださいって。」

「え?」

「俺がお前を妬かせたくてすまいるに通ってるの、バレてたんだな。結局お妙さんだけじゃなくて、お前も…いや、むしろお前を深く傷つけていたのに気づかなかったんだ。」


なんだそれ。なんだよそれ。俺を妬かせたくてあんな真似してたって言うのか?ふざけるな。そんなの、


「トシ…俺のこと嫌い?」

「そんなくっだらねぇこと考えてるあんたは嫌いだ、馬鹿。俺がどんな思いで…」


どんな思いであんたの背中見てたのか知ってんのか。


「二度と行くなとは言わねぇ。でも、もうちょっと俺の側にいてくれ…。」

「トシ…っ!」


俺を抱き締める近藤さんの腕が震えていた。
その腕に抱かれて、やっぱり俺の居場所はここなんだと思った。






「近藤さん、なんであんなに急いで帰ってきたんだ?」

「お妙さんに言われたんだ。うかうかしてると大事なものを横からかっさらわれるってな。まさかとは思ったが、急いで帰って来てよかった。」

「近藤さん…。なぁ、俺のこと、許してくれんのか?」

「今回はお互い様だ。次からは許さない。お互い、な。」


近藤さんは、太陽みたいに笑った。万事屋には悪いが、やっぱり俺はこの人の隣しかあり得ねぇみたいだ。







end.







誰だよこのビッチは、とか。昼ドラか、とか。私も思います。
すみません。二次創作における浮気が好きなんです。

途中で色々と見失って無理矢理終わらせた感がとんでもないですがまあ気にしないでくださいごめんなさい。









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あきゅろす。
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