[携帯モード] [URL送信]

sub
欲しいのはそれじゃない(小政)
 






例えば俺もお前も農民で、何のしがらみもなくて、そしたらお前は俺をありのままに見てくれたのか。
どれだけ近づいたところで、俺とお前は城主と家臣なんだろう。この関係によって、お前は俺に忠誠を与えてくれた。しかし、裏を返せばそれ以上は踏み込めないという消えない境界線でしかない。

だからこんな風に近づいてもお前は何もしてくれない。
拒むことも、受け入れることも、しない。


「政宗様、お戯れはお止めください。」

「嫌なら殴ってでも拒めば良い。」

「政宗様…。」

「これ以上、近づけねぇのか。なぁ、小十郎。」


小十郎の膝の上に乗っかって、出来るだけ顔を近づける。小十郎の困り果てた表情。飽きるほど目にしてきた。こんな行動に出るのも、もう何度目だろう。
小十郎はその度に俺を無難な言葉で諌めるだけだ。飽き飽きした。もう、うんざりだ。小十郎の気持ちを知っているからこそ、もう辛抱ならねぇ。俺のこと、好きで好きで堪らねぇって顔してるくせに、何だよその顔。


「お前、俺が他の奴のところに行って良いのか?」

「はぁ…妻を娶ると言うのならば、喜ばしいことかと。」

「そうじゃねぇだろ。なぁ、お前も気づいてんだろ?伊達軍の奴らがどれだけ俺のこと大切にしてるか。そして、その中には忠誠以上の感情を持ってる奴が居るか。俺が言いたいこと、わかるだろ。お前、昔からそういうの聡いんだから。」

「政宗様!」

「我慢してんじゃねぇよ。いい加減にしろ…。」


視界がぐらついた。地面が歪む。何で俺がこいつのために泣かなきゃならねぇんだ。
伝わらない。届かない。
悔しくて、情けなくて、切なかった。
隠せるとは思わなかったが、こんな情けない顔を見られたくなくて、小十郎の肩に顔を埋めた。


「ま、政宗様っ?」

「馬鹿…なんで…俺は、お前じゃないと駄目なのに…。」


ひどく弱々しい声に、自分でも驚いた。
全部小十郎が悪い。こんなに胸が痛いのも、息が苦しいのも、全部。


「申し訳、ありません…貴方様を傷つけたくなくて拒み続けてきたというのに、こんな風に泣かせてしまうなんて…情けねぇ…。」

「小十郎…?」

「政宗様…」


小十郎は吐き出すようにそう言った。そして、暖かくて大きな手が俺の体を抱き締めた。
この感覚をずっと求めてきた。幼い頃とは違う。恋慕の情を持っての抱擁。


「遅ぇんだよ、馬鹿。」

「申し訳ありません。…政宗様が仰っていたように我慢していたんです。しかし…あのような表情をされては…。」

「昔から、お前は俺の涙に弱かったもんなぁ、小十郎?」

「い、如何にも…。」


少しからかってやるとばつの悪そうに視線を下げる小十郎に、昔を思い出す。あの頃から随分と経ったのに、根本は変わらねぇ。俺も小十郎も、互いが大切すぎるんだ。


「なぁ、小十郎…」

「はい?」

「愛してる。」

「っ、政宗様!?」

「お前は?」


小十郎はまた困った顔をした。でもさっきの顔とは違う。今のは恥ずかしくて堪らねぇって顔だ。


「お慕い申し上げております。」


顔を赤く染めて言う小十郎に、体温が上がった。そんな俺を見て、小十郎もまた照れ臭そうにした。
これからこんな日々が続くかと思ったら顔がいまいち締まらないが、こんなのも良いよな?今までずっと我慢してきたんだから。






end.






初書き小政。
相変わらず中途半端。

しかし主従には浪漫がございますね。








[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!