sub 夕暮れのグラデーション(神戸×祇園)※R18 ※方言男子で神戸×祇園 祇園ちゃんが俺のベッドに座って本を読んでいる。その横顔にグッと来た。長く影を落とす睫毛であったり、その伏し目がちな視線であったり、ページを捲る指先であったり。とにかく全てが色っぽくて。そして何より、そのシチュエーションが堪らない。俺のベッドに…いつも俺が祇園ちゃんのことを考えて悶々としている場所に祇園ちゃんが…!! 「…さっきから何なん」 「へっ!?」 「視線が痛いんやけど」 「…そんなに見てました?」 「見てました」 本から視線を上げて俺を見る祇園ちゃんは、少し不機嫌な様子だった。そんな表情も可愛い、なんて思ってしまう俺は中々どうかしてる。 「その本、面白い?」 「おん。まぁおもろいけど」 「ふぅん…」 「でもお前、あんま本とか読まんやろ?」 くすくすと可笑しそうに笑う。穏やかで、幸せな時間。 空は夕方の橙から、徐々に夜の濃紺へと姿を変えようとしていた。今日は、両親とも泊まりの用事があって帰って来ない。朝まで誰も居ない、二人きりの空間。それは俺たちを“友達”から“恋人”へと変えるのには十分すぎる要素だった。 「俺と居るよりおもろい?」 「なんや。寂しかったんか」 「当たり前やろ?」 本当は見とれてましたと言ってやればよかった。でも、祇園ちゃんがあまりに優しい顔で笑うものだから、寂しかったということにしておいた。 祇園ちゃんは誘うように笑って、床に座っていた俺の頭をそっと撫でた。それはまるで、ご主人様が犬を撫でるような仕草だった。それすら俺を煽る。 「祇園ちゃん…」 甘えるように上目遣いに見つめて掠れた声で名前を呼ぶと、祇園ちゃんは少し肩を震わせた。それが期待なら、嬉しい。 俺の頭を撫でていた手を優しく包んで、手の甲にキスをした。白くて細い、綺麗な手。 祇園ちゃんは、もう片方の手に持っていた本をぱたりと閉じて傍らに置いた。それを合図に、俺は祇園ちゃんにキスをした。 「ん…っ」 「祇園ちゃん、」 「ふ、ぁ…神戸…」 「かわいい…」 黒くて綺麗な瞳が、俺だけを見つめている。かわいい。もっと、俺だけを見て、俺を好きになってくれたら良いのに。 祇園ちゃんの肩に添えていた手に力を込めて、ゆっくりとベッドに押し倒す。艶めいた黒髪が、シーツに散らばった。祇園ちゃんは少し焦ったように眉を寄せている。 「神戸…」 「…あかん?」 「あかん、ことない…けど…」 「じゃあ…」 「まだ明るい、し…」 「もう薄暗いやろ?直に真っ暗になるから」 「でも…っ」 「ごめん、我慢できん」 ただの恥じらいだということはわかっていた。恥ずかしがってる祇園ちゃんがかわいくて、もう我慢なんかできなかった。 もう一度唇を重ね、欲望のままに祇園ちゃんに触れた。その度に聞こえる艶かしい声に、俺の理性はどんどん崩れていった。 「ゃ、あ…っ!神戸…んん、っ」 「祇園…っ、は…ぁ…めっちゃ、えろ…」 「あほ…っ!あんま、見んな…っんぁ…!」 「ほんまに、っかわええ…」 「ひ、ぁ…っ!あか、ん…僕、もう…っ」 「すき…好きやで、祇園…っ」 「あ、ん…っ、ぼく、も…っすき…だいすき…っ!」 幸せって、こういうことを言うんだろうか。大好きな人が、俺のことを大好きだと言ってくれる。それが幸せじゃなくて何だ。 互いに欲を吐き出したあと、吐息が混ざってしまう距離で見つめ合った。 蕩けてしまいそうな目。赤く染まった頬。濡れた唇。可愛くて仕方がない。 「祇園」 「なに?」 「お前エロすぎるわ」 「っ、セクハラや!」 「恋人同士にセクハラなんかありませんー」 「ほんま腹立つわ…」 行為が終わってしまえば、また友達に戻っていくような気がした。ずっと甘い空気を保つのは難しい。 でも、友達の時の祇園ちゃんと、恋人の時の祇園ちゃんの両方を見られるのは、少しお得な気がした。 もっと、知らない祇園ちゃんを知りたい。もちろん、祇園ちゃんの知らない俺の部分も知ってほしい。 「祇園ちゃん」 「なに?」 「すきやで」 「何なん、今さら」 「やから、もうちょっと恋人でおって」 素直に言うと、祇園ちゃんは可笑しそうに笑った。馬鹿にされているような気もしたが、その笑顔が可愛かったから、俺もつられて笑ってしまった。 「ほんま今さらやな」 「だって、すぐ友達の雰囲気に戻ってまうから…」 「ええよ。もうちょっと、恋人で」 「ほんまに?」 「おん。どうする?キスでもしとく?」 色気の欠片もない台詞のくせに、不適な笑みと相俟って、何故だかとてもきゅんとした。 祇園ちゃんの指が俺の首筋に触れて、やがて唇に柔らかい感触。子どもみたいなキスなのに、ドキドキする。 「祇園ちゃん…」 「かわええなぁ。神戸大好き」 やっぱり、馬鹿にされてる? でも、まあええか。祇園ちゃんが俺のことで楽しそうに笑ってるなら。 得意気に笑う祇園ちゃんを、ぎゅう、と抱き締めた。少し焦ったような声が、耳に届く。でもまたすぐにかわいい声で笑った。 愛しい気持ちが溢れて、どうにも止まりそうにない。今日は友達に戻れるのだろうか。いや、きっと無理だろう。想像して、苦笑する。 今日が終わるまで、恋人でいよう。ほら、夜はまだ始まったばかり。 end. 夕方から盛る二人。(そして夜明けまで) ★ [*前へ][次へ#] [戻る] |