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恋煩いの処方箋(銀土)
例えば剣を抜く姿だけでも美しくて、俺は見とれてしまう。
そんなことを言ったら、あの鋭い目付きで俺を見て「くだらない」と、一言呟くのだろう。
伝わらない。
(伝わらないのは伝えないからだ。)
伝えられない。
(伝えられないのは嫌われることを恐れているからだ。想いが通じ合うことよりも、ずっと。)
腐れ縁だ。アイツにしてみれば、俺は何かと絡んでくるうざい奴なんだろう。それ以上でもそれ以下でもない。
「あーもう、もやもやする。」
誰もいない部屋で呟いたその声は思いの外響いた。こんな夜は思考がまとまらない。余計なことばかり考えてしまう。ああ、もやもやする。
伝えたらそれまで。恋は惚れた方が敗けだって言うだろう?別にそれにかこつけて躊躇っているわけではないが。
こんな感情は忘れてしまおう。そう何度も思ったのに、あの黒い隊服を見ただけで心臓の奥が締め付けられる。その力は一点に集中し、すべての重力によって押し潰されそうになる。俺はその痛みによって恋を思い出してしまう。その隊服がアイツじゃなかったとしても。
「馬鹿げてる。俺らしくもねぇ。全く、情けないね。」
恋のひとつも満足に出来ないなんて。
それでも俺は、この恋を叶えることも、ともすれば抜け出すことすらも出来ない。
しかし心のどこかで、徐々に絡まって深みに嵌まっていくこの恋に囚われるのも悪くないと思う自分がいた。
(悪趣味。まぁ俺らしいか。)
そして俺はせめて夢の中では、と瞼を閉じた。
end.
髪の毛と同じようにもやもやくるくる考える銀さん。
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