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そこに意味はないとして(タイユキ)※R18



※??×ユキ前提タイユキです






例えばそれが誰かの代わりだったとしても、私は構わないと思う。隣に寄りかかってくる体温を愛しく思うのは変わらないのだ。

ユキは私を好きだと言った。そばに居たいと、言った。その時の縋るような目と、その奥に感じた諦めの色に、私は困惑していた。私を好きだと言ったユキの目に、私は映っていないような気がしたのだ。それでも私はユキを離したりなんかしない。なんでもいいのだ。ユキがそばに居たいと願ってくれるのならば、私はそれに応じるだけだ。自分自身の醜い劣情に身を委ねて。ユキの気持ちは不透明で、ぼんやりとしている。ひとつだけ分かることは、私に対しては何の感情もないということだ。私はその事実を知りながら、気づかないフリをする。


「タイフウさん…もう一回、したい」
「どうした、今日は随分甘えてくれるんだな」
「そういう気分なんです」
「仕方ないな、ユキは」


きっと、何かをごまかそうとしている。ユキが見つめる先にいる人物を想って、ユキの心は泣いて、悲鳴を上げて、でもユキはそれを認めようとしなくて。苦しいくせに見ないふりをする。苦しいのを我慢するために私に抱かれるのだ。


「ねぇ、お願いします…」
「…っ」


その、無垢な瞳で。さも、私だけを見ていると言うような、瞳。
私はそれにまんまと乗せられて、その苦しみが消えるようにまた彼の細い体を抱く。

部屋の温度は湿度を伴って上がっていく。すえたにおいが部屋にこもる。ただ気だるく、そこに愛なんてないくせに、体温は否応なく上がっていく。なんて空虚で、なんて悲しくて、それなのに、どうしてこんなにも美しいのか。どうしてこんなに、この時間が愛しいのか。

目に、生ぬるい水が溜まっていく。快楽に身を任せるユキの表情が、ゆらり、歪んでいく。
瞬きを一つ。ユキの滑らかな肌にぽつり。水滴はユキの体を伝ってシーツへと吸い込まれる。クリアになる世界。なのに私の心は黒く濁って、ひどく痛んでいる。


「タイフウさん…」


ユキの細く冷たい指が、私の目元に触れる。そしてその指は、私の髪をやさしく撫でて、私を自らに引き寄せた。やがて触れ合う唇。絡み合う舌。漏れる吐息。
このキスに何の意味があるのだろう。償い、なのだろうか。それとも、憐みだろうか。そんなことはどうだっていい。私はただこの毒を、全て飲み込んでしまうだけだ。


「ん、ふぁ…んん…!は、っん、ふ、あ…っ」
「んん、っユキ…」


口を塞がれたままの行為だ。酸素が足りないのだろう。ユキの瞳は涙に濡れ、どこか朦朧としていて、その表情がやけに色っぽくて、愛しい。
私のことを見ていないのは変わらない。けれど、いつもユキが想っている人物さえも、今は映っていないような気がするのだ。もっと快楽に突き落としてどろどろにすれば、ずっと誰のことも見なくなるのだろうか。

なんて、馬鹿な妄想だ。
乾いた笑いがこみ上げてきそうだ。


快楽の波に襲われて目の前が真っ白になる。
気づけばユキはぐったりとして、寝息を立てていた。私はユキの頬を撫でる。きめが細やかで、色が白くて、作り物のようだった。そこに、一筋の涙の跡があるのに気づく。それが行為によるものなのか、それとも別の理由があるのか。一瞬考えて、やめた。

私は都合のいい男でいい。そうあることで、ユキの中に存在できるのであれば、それでいい。どれだけ心が悲鳴を上げてやめてくれと懇願してきても、私はこの関係をやめることはしない。いや、できないだろう。それだけ私はユキを、


「…愛してる」


きっと、どちらかが壊れてしまうまで終わることはないのだから。









end.









タイユキには爛れた関係がよく似合う。













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あきゅろす。
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