main 目移り。 ※アメユキ ※前の話と続いてたり続いてなかったり ※長官ネタ ユキの様子がおかしい。 「はぁ…」 帰ってきてからずっとこんな感じ。ため息ばかり。 確か今日は長官とミーティング、とか何とか言ってたけど、まさか… 「ユキ!ねぇ、ユキってば!!」 「…えっ、ああ、アメ。どうしたんですか?」 「ごめんねユキ!僕も一緒に行けばよかったよ!!」 「は?」 「長官に何か言われたんでしょ?!」 どうせあの長官のことだ!ユキにセクハラまがいなことをしたに違いない!長官はピチピチのギャルが好きとか言ってたけど、ユキのこともなんかやらしい目で見てる気がする!!まあユキはギャルというよりは天使というか聖母というかそういう類の美しさだけどね! 「ユキ!長官に何されたの!?手握られた?肩に手を置かれた?腰に手を回された?まさか、ちゅ、ちゅーされたとか…!?」 「何を馬鹿なことを考えているんですか。アメじゃあるまいし、長官がそんなことするわけないでしょう?」 「でも…!」 「とにかく、長官には何もされていません」 「じゃあ、なんでさっきからため息ばっかりついているんだい?」 「そ、それは…っ、」 一瞬、ユキの表情に焦りが見えた。やっぱり、何かあったんだ。 「ユキ、僕には言えないの?」 「…言いたくありません」 「どうして?」 「だって、きっと…アメは怒るから…」 「怒らないよ。僕がユキに怒ったことなんてないでしょ?」 「でも…」 「言わないと、怒っちゃうかも」 僕がそう言うと、ユキは観念したように口を開いた。 「長官、が…」 「うん」 「いや、あの…長官のこと、が…」 「長官が、どうしたの?」 「…っ」 「ユキ」 たどたどしく紡がれていく言葉。だけど、なかなか文章になってくれない。 いつもは口の立つユキが、こんな風になるなんて…長官、ユキに何をしたって言うんだ!! 「大丈夫だよ、言ってごらん?」 「…っ僕、長官のこと…」 「うん」 「か…かっこいいな…って…思ってしまいました…」 「うん…え?」 「不覚でした…いつもへらへらしてていい加減なのに…」 「待ってユキ、全然聞こえなかった。もう一回言って」 「え?ですから、長官かっこいいなって」 …ああ、そうだ。ユキは昔から容姿が整っている人に弱いんだった。例えば僕とか。 でも僕以外にも傾いちゃう時があるんだよな…クモリが変な薬でイケメンになっちゃったときとか、あと、双子が大人になっちゃったときとか。 でもまさか長官にまで… 「ユキ!僕のこと見て!かっこいいでしょ!!長官なんかよりかっこいいでしょ!!」 「いや、まあ確かに整った顔をしているのは認めますが、なんというか…見飽きたというか…」 「そんな!!確かに付き合いは長いけど!!僕はユキの顔を見飽きたことなんて一度もないのに!!大体、あんなおじさんのどこが良いって言うんだい!?」 「長官はとても大人な方です。そんな風に喚いたりしません。それに、いつもいい加減な分、真剣な表情がとても魅力的と言うか…」 「何それ!!もう聞きたくないよ!!」 「ほら、やっぱり怒るじゃないですか」 「…べ、別に怒ってるわけじゃ…」 「アメ」 ユキは、そっと僕の手を取って、じっと僕の目を見つめる。 その、綺麗な瞳は、やっぱり見飽きることなんてない。ずっと、見ていたいと思う。 ユキが僕の手をぎゅっと握る。冷たい手に、僕の体温が流れ込んで、混ざり合う。 上目遣い気味に僕を見る、その仕草。呆れたように笑う口元。 「多少目移りすることはあっても、本気でなびくことなんてありえませんから、安心してください」 自惚れなんかじゃない。ユキは、好きな人の前ではこんなにも可愛い顔を、仕草をするんだ。 僕以外にも、そんな表情をしているなら、ユキがそんな気なくったって… そう思って、ユキに言おうかと思ったけど、やめた。そういうことを言って、ユキが機嫌を損ねるのはわかっているし、何より、ユキを信じたい。 「ほんとに?」 「本当です」 「じゃあ、もう長官のこと…長官以外の人のことも…考えないで?」 「それは…あなた次第です」 「え?」 「あなたが、僕を夢中にしてくれるなら、あなたのこと以外は考えませんよ?」 そう言って、ユキは笑う。 可愛い顔をして、厳しいことを言う。でも、そんなユキが、たまらなく愛しい。 「ユキのこと夢中にさせるよ!だから、ユキも、あんまり嫉妬させるようなこと言わないでね?」 そんなことしなくったって、僕はユキに夢中なんだから。 僕がそう言うと、ユキはまた呆れたように笑った。少し顔が赤くなっているような気がしたけど、あえて何も言わなかった。このままもう少し、ユキの照れた顔を眺めていたかったのだ。 end. ユキちゃんはイケメンに弱い ★ [*前へ][次へ#] [戻る] |