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今夜、君と二人で。





長い雨が止んだ街は、全てを洗い流されたように輝いて見えた。冷たい風が僕の頬を撫でる。また季節が進んだ気がした。
僕は溜まった洗濯物を干す。太陽の優しい光が街中の水滴に反射して、まるで宝石のようだった。

澄んだ空気と、少しだけ残った雨の匂い。思わず彼の笑顔が浮かんで、一人苦笑する。

アメはここ数日ずっとはしゃいでいたため、昨日の夕方に帰ってきてからずっと自分の部屋で眠っている。タイフウさんとほぼ行動を共にしていたらしく、帰ってきて早々「ユキはタイフウなんかに渡さないから」と言って僕に抱きついたまま眠りに落ちた。あらかたタイフウさんの何気ない一言に勝手に勘違いして勝手に嫉妬して勝手に敵意をむき出しにしてしているだけだろう。タイフウさんも大変だっただろうと思いつつ、少しでも嬉しくなってしまった自分が恥ずかしい。

無意識に緩んだ頬を引き締めて、洗濯物を干し終えた。ほのかな洗剤の匂いがベランダに漂った。

そろそろアメが目を覚ます頃。外も随分冷えてきたことだし、何か温かいものでも作ってあげようか。その前に、アメの馬鹿みたいな寝顔を見て笑うのもいいかもしれない。僕は洗濯籠を抱えながら、また自然と緩む頬を隠すように少しうつむいた。




***





遮光カーテンから漏れる光も気にせずに、アメは気持ちよさそうに眠っていた。雨上がりとはいえ湿度は低くないのに、アメの髪は嘘みたいにさらさらで、湿度のままにくるんくるんになるクモリの髪とのギャップに、つい笑ってしまいそうになる。
そっとその髪を撫でると、アメはくすぐったそうに身をよじった。


「アメ」


小さな声で名前を呼ぶ。アメは声にならない声でうなると、また寝息を立て始めた。
何故か少し寂しくなって、今度は出来るだけ耳に近づいてまた名前を呼び、そっと頬にキスを落とす。すると今度はびくりと体を震わせた。そして、アメの瞼がゆっくりと開いていく。綺麗な瞳。久しぶりに見つめられて、ほんの少し胸が高鳴る。


「ん…、ユキ…?」
「おはようございます」
「、あぁ…うん。おはよ、ユキ」


ぼんやりとした目で言う。その様子がなんだか幼く見えて、思わず吹き出してしまった。


「え、なに?」
「いえ、なんだか子どもみたいだと思って」
「だって寝起きだししょうがないじゃない…」


アメは眠そうに目をこする。こすっちゃだめですよ、と諭すのも、なんだか可笑しい。


「っていうかさ、ユキ」
「なんですか?」
「さっき僕のほっぺにちゅーした?」


いまだにはっきりしない口調で言った。改めてそういわれると恥ずかしい。


「さ、さあ。どうでしょう」
「あのね、ユキ…」


眠そうな顔なのに、僕の腕をつかむ手は意外と強い。


「最近まともにユキに触れてないから、そういうことされると困る」
「え、」
「襲っちゃうよってこと」


そう言ったアメはいつの間にか覚醒していたようで、そのきれいな瞳は僕をひたすらに見つめていた。


「ユキ…」
「ふふ、いいですよ」
「っ!」
「さすがに今はだめですけど」
「…なんだ」
「それと、タイフウさんなんかになびきませんから、安心してくださいね」
「!!」
「なんて、ね」


目を丸くしたアメを尻目に、僕はカーテンを開けて、アメの朝ごはんを作りにキッチンへと向かった。
詳しい話は、夜。ベッドの中ですればいい。











end.
















台風が来ているときはアメ様とタイフウさんで長期出張、あるいは全国ツアーですし。















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あきゅろす。
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