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君とドライブ。






今日は朝から雨が降っている。夕方からは特売だというのに、少し気後れする。
部屋干しした洗濯物を畳んでいる僕の横で、アメはぐったりと横になっていた。連日の仕事で少し疲れているように見える。そんな彼に車を出してもらうのは些か申し訳ない。


「僕も免許とろうかな…」


いつまでもアメに頼ってばかりいられないだろう。そう思って、何気なく言った言葉。しかし、アメは驚いたように飛び起きた。


「ユキがそんなことする必要ないよ!」
「どうしてですか?」
「だって僕がいるじゃない!!」
「でも…さすがに疲れているところ運転させるのも気が引けますし、何より事故でも起こされたらたまったものでは…」
「そんなの全然大丈夫だよ!!ユキを乗せて事故なんてするわけないじゃない!!」
「そうは言っても…」
「とにかく、ユキは僕の運転する車に乗っとけば良いの!!」


アメは語気を強めて言った。何か焦っているようにも見えた。


「…何をそんなに必死になっているんです?」
「へ!?いや、別に…」
「僕が免許をとると、何かまずいことでも?」
「そんなことは…」
「そんなに心配ですか?僕だって運転くらい出来るようになりますよ」


非常に不本意ではあるが、機械音痴と言われることが多い僕であっても、教えてもらいさえすれば出来るようになるだろう。それをはなからしなくて良いと決め付けるのは納得いかない。


「あ、ユキ…そういうことじゃないんだ」
「じゃあどういうことですか?」
「心配なんだ」
「だから心配なんて、」
「教習中、教官とあの狭い空間で二人きりになるのが、心配で心配でたまらないんだ!!」
「…は?」


アメは悲壮感を駄々漏れにして言った。僕は呆れて声も出なかった。


「そんなくだらない心配…」
「何があるかわからないじゃない!!」
「何もありませんよ!」
「何もなくても!!ユキとドライブして良いのは僕だけなんだから!!」


ああ、この男は馬鹿なんだ。改めてそう悟った。
まずアシにしていた行為をドライブと捉えていることに少し引いた。


「貴方って人はほんとに…」
「それに、ユキが免許取っちゃったら僕の存在価値がひとつなくなるでしょ?」
「そんなことは、」
「僕はユキに必要とされたいんだよ。どんな形でも」


急に真面目な声で言われて焦る。そっと握られた手は、少し暖かかった。


「だから、ユキは僕に頼ってれば良いの」
「でも…」
「僕のためにも、ね?」


馬鹿みたいに優しい笑顔で言ったから、思わず頷いてしまった。アメも元気そうだし、やっぱりここはアメの言葉に甘えてしまおう。
洗濯物はもうたたみ終わった。タイムセールまであと少し。僕たちはいつものように戦場へ向かう準備をした。心なしかアメが嬉しそうなのには、気づかないふりをしておこう。






end.









万が一ユキちゃんがまた免許取りたいとか言い出したら「免許取るお金も馬鹿にならないよ」という魔法の言葉を囁くと良いでしょう。












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あきゅろす。
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