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足りない。※R18




※アメユキですがリバ要素あります。でも最終的にはアメユキです。苦手な人はご注意ください!















「貴方を抱きたいんです」


それは、あまりにも突拍子もない言葉だった。ユキは僕を押し倒して、泣きそうな表情を浮かべて言う。僕はただ、ユキを見つめる以外できなかった。
ユキだって男なんだから、恋人を抱きたいと思っても何ら不思議ではない。でも、何年も付き合ってきて一度もそんなことは言わなかったのに。もしかしたら、最初からずっと僕のことを抱きたいと思っていたのだろうか。僕の耳の横に置かれているユキの手に、そっと自分の手を重ねる。


「どうして僕を抱きたいの?いじめたくなった?」
「そういうんじゃありません」
「じゃあ、どうして?」
「それは、」


言葉にするのさえ苦しそうに見えた。僕まで胸が苦しくなった。
ユキは搾り出すように言った。足りないからです、と。
僕はその言葉の意図をぼんやり理解した。愛されるだけじゃ足りないと言いたいのだろう。その気持ちはわからなくはない。僕はもともと愛されることよりも自ら相手を愛すことに喜びを感じるタイプの人間だし、愛すことで安心感を得ている節もあった。ユキもきっとそうなんだろう。僕のことを、愛したいと思ってくれているのだろう。


「いいよ」
「え…?」
「僕、ユキになら抱かれても良いよ」
「っ、」


ユキは泣きそうに笑った。その表情がとても健気で、僕はユキを抱き寄せてキスをした。少ししょっぱい味がした。
酸素を奪い合うように交わす口付け。追い詰められているのは僕。思わずユキの服の袖をぎゅっと掴む。ユキは遠慮がちにすみません、と言った。珍しく弱気なユキに、僕は何も言えなくなってしまった。
ユキの唇が僕の首筋を優しく食む。柔らかい感触と同時に湧き上がる欲情。ついユキを押し倒したくなったが、必死なユキを見るとどうにも動けそうになかった。ユキの手が忙しそうに僕の体に触れる。


「ん、っユキ…」
「アメ…」
「そんな、焦んなくて良いからさ」
「でも…」
「大丈夫だよ」


そっとユキの髪の毛を撫でる。ユキは目を伏せて俯いてしまった。
優しい、触れるだけのキスを繰り返す。


「アメ、好きです…」
「うん」
「っ、アメ…!」


ユキの冷たい手が頬に触れ、鎖骨に触れ、胸に触れる。遠慮がちに繰り返される愛撫だったが、やがて胸の突起にぴちゃりとユキの舌が触れた。


「ん、ぁ…っ」
「アメ、きもちいい?」
「ぅ、ん…いいよ…っあ…!」
「かわいい…もっと声、聞かせてください」


上目に僕を見て、恍惚の表情を浮かべて言う。今襲われているのは僕のほうなのに、ユキがかわいくて、愛しくて仕方ない。
ああ、もしかしたらユキは今の僕と同じ感情をずっと抱き続けていたのかもしれない。愛されるだけじゃ物足りない。もっといろんな表情を見たい。自らの手によって欲に溺れていく姿を、見たい。乱したい。壊したい。
こんな風に快楽を与えられているとよくわかる。脳がそればかり気にして、つい余裕がなくなってしまうのだ。ユキはそれが怖かったのかもしれない。

胸の突起を刺激する舌はそのままに、ユキの手が下肢に伸びる。内腿をやんわりと撫でる手に、ぞくぞくしてしまう。


「あ、っ…ユキ…!」
「ここも感じるんですか…?」
「ちが、っあ…んん…っ」
「意外に敏感なんですね」
「っく、ぁ…やめ…っ」


意地悪な言葉。少し余裕ぶった表情。そのすべてが僕を高ぶらせる。
不意に漏れる声が恥ずかしくて、必死に手の甲で口を覆った。しかし、その手もすぐにユキにはずされてしまう。そしてそのまま手を押さえつけられ、代わりにキスをされた。


「んん、ふ…ぁ…」
「ん、んぅ…アメ…声、我慢しないで…」
「でも、」
「聞きたいんです…貴方の声を…」


おねがい、と縋るように言う。息が出来ないほど美しい。
僕はそれ以上抵抗はしなかった。ただ、ユキに与えられる快楽に身を委ねていた。


「アメ…」


僕の名前を呼ぶその声はひどく切ない。それと同時に、ユキの視線からは明らかな欲情が感じられる。今まで見たことのない、欲に溺れきった表情に、僕が興奮しないわけがなかった。抱かれている最中なのに、ユキに触れたくてたまらない。
今日はユキの好きなようにさせると決めていた。ユキの不安を取り除いてあげたいと思っていた。それなのに、僕はどうしても我慢できそうにない。
またユキを不安にさせてしまうかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。でも、あふれそうな想いを僕に向けているユキを見て我慢できるほど僕は人間が出来ていないのだ。


「ユキ、ごめん」
「え?」
「ごめん…っ!」


僕はユキの手首を掴み、ぐい、と引き寄せた。驚いたように目を丸くするユキをよそに、僕はユキを力ずくで押し倒した。無理に引っ張ったからか、ユキは痛みに顔を顰めていた。
状況を掴みきれていない様子だったが、僕は性急にユキの唇に噛み付いた。鼓動が速くなる。


「アメ、っ…何するんですか…!」
「ごめん」
「言ってたことと違…っ」
「文句ならあとでいくらでも聞くから…っ」
「ゃ、あ…っ!」


ユキは目に涙を溜めてただ喘ぐばかりだった。心がずきんと痛んだが、その痛みは深いキスでごまかした。


「ん、ふ…ぁ」
「ユキ…ごめんね」
「謝るくらいなら、」
「愛してるよ」
「っ、」


そう言ってユキの体を強く抱きしめた。ユキは小さな声でずるいと言った。

いつもよりも時間をかけて愛撫する。髪を撫でて、頬にキスをして、耳元で何度も愛の言葉を囁いた。
切羽詰ったような声。必死に僕に縋りつく指。僕を睨む、潤んだ瞳。すべてが僕を支配していく。感じるところに触れるたび、敏感に跳ねる体が愛しい。僕だけが知っている、ユキの姿。

ゆっくりとユキの中に指をうずめる。柔らかくて熱い中で指を動かすと、指が締め付けられるのを感じた。


「ひ、ぁ…あ…!」
「ユキ…痛くない?」
「んん…っ!へいき、です…っあ、ぁ…ん!」
「じゃあ、きもちいい?」
「っ、や…ぁ…っ!だめ、そこ…っ!」
「気持ち良いんでしょ?ここ、触るといつも締め付けてくるからわかるよ」
「、ばか!」
「かわいいよ。大好き」


すきだよ。あいしてる。そんな言葉を何度も何度も口にした。それでも到底伝えきれない。ユキに触れる手に、足りない言葉をこめる。愛しさに溺れて死んでしまいそうだと。
長い愛撫に焦れたのか、ユキはもう良いです、と頬を染めながら言った。はやく貴方がほしい。そう言ったユキは、僕の肩に手をやって押し倒した。


「あ、あれ…まだ諦めてなかったの…?」
「今日はもう良いです」
「今日は、僕が上になります」


理解が追いつかないままの僕を無視して、ユキは僕の自身に手を添えた。そして、それをゆっくりと自らの中へと入れていった。


「ぅ、あ…っユキ!」
「ん、あっ」
「…っ」
「っはぁ、あ…全部、入りましたよ…」


ユキは僕の上に乗っかって、その結合部を愛しそうに指でなぞった。ユキは僕を見下ろして、満足そうに笑った。その表情があまりにかわいくて、綺麗で。思わず腰が動いてしまう。


「あ…っ!」
「ユキ…!」
「待って…動かないでください…」
「え…」
「僕が、するから…」


そう言って、ユキはゆっくりと腰を動かし始めた。ユキのしなやかな体が艶かしくくねる。
互いの息が部屋の温度を上げていく。最初は遠慮がちだった動きも、どんどん大胆になっていく。
やがて一つになる体温。呼吸。ユキは僕に深く口付けた。呼吸が出来なくなりそうなキスだった。ユキは呼吸が乱れた僕を見てかわいいと呟いた。もう、どちらが抱かれているのかわからない。
扇情的な視線。ユキの唇から漏れる熱い吐息。動くなとは言われたが、どうにもおとなしくしていられない。僕は、快楽に震えているユキの自身をそっと握った。


「、ゃ…あっ!アメ…!触らないで、っくださ…ぁ…っ!」
「でも、このままじゃつらいでしょ?」
「そんなこと、っあ…!」
「それに、僕も限界なんだ…っ」


僕はその手をゆっくりと動かし始めた。ユキはその動きに合わせるように腰を動かした。
何も考えられなくなる。ただ、ユキも僕も、お互いを求めることに必死だった。足りない。そう思っていたのは、僕も同じだったのかもしれない。


「っ、は…ユキ…もう…!」
「イキそうですか?」
「あ、っは…ユキ、!」
「中でイってください…僕ももう、だめ…っ!」


目の前が白くなる。部屋に響くのは二人分の呼吸だけ。
僕たちはしばらくそのまま抱き合っていた。こみ上げてくるのはどうしようもないほどの愛しさと、それでもぬぐい切れない不安だった。


「は、あ…」
「ユキ…平気?」
「ん…少し暑いです…」
「ちょっとやりすぎちゃったね…待ってて。今水持ってくるから」
「…」
「…ユキ?」


そう言ってユキから離れようとすると、腕を弱弱しく掴まれた。見ると、ユキがじっと僕を見つめていた。


「水は、あとで良いです」
「え?」
「もう少し、ここにいて」


僕の腕を掴んでいた手に、ぎゅ、と力がこもった。僕はその手をほどいて、何も言わずにユキを抱きしめた。
このままこうして互いの不安が消えるまで抱き合っていられたらどれだけ良いだろうか。でも、そんなことは無理だから、せめて今だけでも。僕は全身でユキを感じながらもう一度愛してると言った。ユキは少し照れたように笑った。


「じゃあ、今度はちゃんと抱かせてくださいね?」
「うーん。考えておくよ」
「ドMのくせに生意気です」
「それとこれとはやっぱり違うかなーって」

僕は曖昧に笑って見せた。確かにユキに愛されるのも魅力的だと思うけど、今はこのまま、僕がユキを愛していたい。足りないというのなら足りるまで、何度だって僕が愛を与えてあげる。だから、ユキには僕の愛が足りないままでいてほしい。ユキにはずっと、僕を求めていてほしい。なんて。絶対に言わないけれど。









end.











ひっくり返したいけどひっくり返せないユキちゃんとかかわいいと思ってしまいました。宗派変えとかではない。です。














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あきゅろす。
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