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移り気疑惑。(ユキハレユキ)






※ライハレ・アメユキ前提のユキハレユキみたいな














知らないうちに指の先が切れていた。紙か何かで切ってしまったのだろう。じんわりと痛む指先。厄介な痛みに、思わず顔をしかめる。


「地味な怪我だな…まるで俺みたい」


自虐的な言葉が漏れる。不意に思い出してしまった。昨日もまたライに馬鹿にされたんだっけ。悪気があって言ってるわけではないだろうが、傷つくものは傷つくのだ。フローリングについた無数の傷みたい。気づけばぼろぼろになってる、みたいな。そういうのがわかんないから、いつまで経ってもガキだなんだと言われるんだ。

ずきん、と指先が痛む。とりあえず絆創膏でも貼っておこうか。救急箱はどこにあっただろうか。
絆創膏を求めてうろうろしていると、洗濯物を取り込み終えたであろうユキが声をかけてくれた。


「ハレ、どうしたんです?」
「なあ、絆創膏ってどこにある?指切っちゃって」
「それは大変ですね。待っていてください。すぐに持ってきてあげますから」



そう言って、ユキは救急箱を取ってきてくれた。
ユキはそっと俺の手を取って、消毒液を吹きかけた。


「ちょ、ユキ!これくらい一人で出来るって!」
「いいから。右手ですし、一人じゃやりにくいでしょう?」


ユキはいつもの優しい笑みを浮かべて言った。癒される。荒んでた心が少し満たされた。


「ユキは優しいのな」
「そんなことありませんよ」
「いや、優しいって。あいつももうちょっとユキを見習ってくれたら良いのに…」


言ってから、しまったと思った。誰かの前でライのことを話すのは気恥ずかしいから苦手なのだ。


「あ、えっと…」
「ふふ、ライのことですか?」
「っ、まあ、そうだけど…」


ユキの冷やかすような視線がくすぐったい。
俺は思わず俯いてしまった。


「ライは優しくないんですか?」
「そうじゃねぇけど…でも、俺のことあんまり好きじゃないんじゃないかって思うことはある」


本音だった。口に出してみると、なおさら切なかった。


「そうですか。実は僕も、最近アメが調子に乗ってるような気がするんです」
「そうなのか?」
「ええ。僕が色々してあげるのが当たり前になっているみたいで」
「あー…確かに…」


優しく絆創膏が巻かれていく。ふと視線を上げると、ユキの視線とかち合った。ほんの少し、心臓が高鳴った。


「ユキ、」
「ねぇ、ハレ。一度彼らに心配させてみたいと思いませんか?」
「へっ?」
「浮気、してみませんか?」


一瞬ユキの言葉が理解できなかった。やっと飲み込めたときには、ユキの顔があまりに近くて驚いた。
俺はあわててユキから距離を置いた。俺とユキが、浮気?そんなのありえないだろ!そうは思いつつも、心拍数は上がっていくばかり。いやいや、でもやっぱり俺はライ以外となんて…!!
ぐるぐるとこんがらがった脳内に、こらえたような笑い声が聞こえた。


「ふふっ…!」
「な、なにわらってんだよ!!」
「冗談ですよ、安心してください」
「は!?」


ユキはおかしそうに笑ってそう言った。冗談にしてはたちが悪い。


「なんだよそれ!笑えねーよ!!」
「すみません。でも、これでわかったでしょう?」
「何が」
「ハレがどれだけライのことを思っているか」
「っ、」


手当てはいつの間にか終わっていた。ユキは最後に、二人で仲良くしてくださいね、と言って洗濯物を抱えていってしまった。
確かに、ユキと浮気と考えたときに、一番最初に浮かんだのはライの顔だ。俺にはきっと、ライ以外はありえないんだろう。

少しくらいデリカシーがないからなんだ。好きな相手なんだから、俺が少し大人になって許してやれば良いじゃないか。そんな風に考えたら、少しだけ気持ちが楽になった。

そうは言いつつ、ユキの提案も魅力的だと思っているのは、秘密。
















end.












小悪魔ユキちゃんと純情ハレくんのゆりっぽい話とか。

















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あきゅろす。
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