[携帯モード] [URL送信]

main
愛すべきマンネリズム。※R18


※R18です。










僕を抱くアメの表情が好きだ。真剣で、優しくて、穏やかで。時折漏れる吐息は熱く、その熱と共に降ってくる言葉はひどく甘い。
ぎゅ、と僕を抱きしめる腕。意外と逞しいそれに、そっと指を這わせる。アメは子どものような笑顔を見せ、僕にそっとキスをした。


「ユキ、っ」
「ん…っあ…!」
「大丈夫?痛くない?」
「っ、へいき、です…」
「じゃあ、きもちいい?」
「、ばか…!」


いつもなら僕が言うような意地悪な言葉。憎たらしい反面、ぞくぞくする。
アメは僕の髪をかきあげて、額にそっとキスをした。柔らかいその感触は今身を焦がすような快楽とはかけ離れた感触で、アンバランスさに少し笑ってしまいそうになった。

長い間同じ人と付き合ってると飽きるでしょ、と誰かが言った。僕は取ってつけたような笑顔でそれを受け流した。飽きる?冗談じゃない。むしろ、一緒にいる時間を重ねるたびに抜け出せなくなるというのに。きっと、僕もアメも、お互いから抜け出せない。

僕はアメが漏らす熱い息を感じながら、このまま溶けてしまいたいと思った。行き場をなくしていた脚をアメの腰に絡める。もっと近くで感じられるように。そして、もう離れられないように。アメはそれに気を良くしたのか、僕の顔中にキスを落とした。


「今日は随分甘えてくれるんだ?」
「っ、うるさい…!」
「かわいい…大丈夫、そんなにしなくても、僕は逃げないからね」


アメが腰を打ち付けるスピードが上がっていく。体温が高くなる。正常な意識ではいられなくなってしまう。僕はただ、アメの首に抱きついて喘ぐことしか出来なかった。限界が近づいてくる。


「アメ、っもう…ぁあ、っ!」
「ん?もう、何?」
「っ、いじわるは、きらいです…っ」
「ふふ、ごめん。あんまりかわいかったから、つい」
「ばか…っいいから、はやく…!」
「そうだね…僕も限界…っ」


主導権を握られるのはあまり好きではないはずだった。それなのに、僕は一方的に与えられる快楽が、嫌いではない。アメは僕の首筋を強く吸って所有の証を刻んだ。その刺激とアメから感じる独占欲で、僕はあっけなく達してしまった。その少しあとに、中にアメの熱を感じた。

行為が終わったあと、汚れた体もそのままに、アメはいつも僕を強く抱きしめる。そして僕は決まってアメの髪をさらさらと指で梳く。すると、アメは嬉しそうに、でも、どこか寂しそうに笑う。その表情は、まるで幼い子どもが母に縋るようだった。


「ユキ」
「なんですか?」
「ユキは僕のこと…すき?」
「今更ですね」
「ねぇ…」
「好きですよ。アメも同じでしょう?」


そっと、アメの頬を撫でる。ちゅ、と音を立てて軽くキスをしてやると、アメはそれに縋り付くように、僕の口内に舌を差し入れた。そのキスは、どんどん深くなっていくばかりだった。


「ん、んんぅ…ふ、あ…」
「ん…」
「ゃ、ん…アメ…っ!」


いよいよ息苦しくなって胸板を押した。アメは目を伏せて、小さくごめんとつぶやいた。


「何でだろ。あんなに幸せな時間を過ごしたあとなのに、不安になるんだ」
「不安?」
「この幸せが、いつか消えてしまうんじゃないかって。そんなはず、ないのに」


無理に笑うアメが痛々しくて、胸が苦しくなった。そして何より、アメの気持ちが痛いほどわかってしまった。
アメは僕を抱きしめていた腕の力をほんの少しだけ強くした。伝わった後に交じり合う体温が心地よかった。


「アメは、僕がすき?」
「…すき、だよ」
「僕も貴方がすきです」
「…」
「それに、僕も不安です」
「え?」
「貴方と同じ。貴方が離れていきそうで、怖い」


そういうと、アメは少し安心したように笑った。でも、やっぱりどこか、憂いを帯びた表情だった。


「なんだ、同じなんだ」
「はい」
「でも、なんでまだ不安なんだろ」
「それは…きっと、体でも言葉でも足りないからです」


僕たちは体を繋げたり言葉を交し合ったりする以外に、相手とつながる術を知らない。それなのに、未来は恐ろしいほどに不透明で、きっとそんなものでは足りないのだ。だから、この得体の知れない不安は、恐らく一生付いて回るのだろう。これが完全に消えるときは、きっと死ぬときくらいなものだ。


「だから、もう一回確かめ合いませんか」
「え、ユキ…ちょっと…っ!」
「いや?」
「…いや、なわけないじゃない」


ユキから誘われるなんてあんまりないから、とアメは笑う。その笑顔が好きだ。屈託なく笑うその表情が、好きだ。
僕はそっとアメを押し倒してキスをした。アメは僕の髪を撫でて、そのままぎゅっと抱きしめた。

何をどうしても、不安は消えない。でも、不安だからこそ、必死に求め合うのかもしれない。
マンネリを嫌う人がいる。同じことが続く日常に嫌気が差す人がいる。でも、きっと僕たちは違うのだ。僕たちはこのままの日々がずっと続けば良いと願うのだ。

そして、僕たちはまた、不安の渦に巻き込まれては這い上がるを繰り返すのだった。











end.











マンネリズムこそ愛しい。

















[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!