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たべてしまいたい。



※病んでるようなそうでもないような









僕は嫉妬深い男だと思う。アメのすべてを僕が独占しておかないと気が済まない。
でも、現実はそんなに都合よく出来ていないもので、放って置いたらきっと逃げてしまう。繋ぎとめる術なんてない。もしアメが僕に飽きて離れてしまったらと思うと、不安で仕方がない。
ああ、アメを僕だけのものにしてしまいたい。いっそ、溶け合って一つの個体になれたらどれだけ良いだろう。

後ろからぎゅっと抱きしめられる、この感覚が好きだ。僕より少しだけ高いアメの体温が、僕の体に流れ込んでいく。熱っぽい息を吐けば、優しく飲み込んでくれる。僕を包み込むように回された腕に触れると、アメは耳元で小さく笑った。しあわせ。このままずっと、こうしていられたら良い。
触れていた腕にそっと唇を這わせる。アメ、僕の一部になってほしい。


「痛…っ!」
「…、」
「…ユキ?」


気が付いたら、僕はアメの腕にきつく噛み付いていた。嫌悪とか、拒絶とか、そういった類のものは一切ない。そこにあるのは、ただ、執着だけ。


「どうしたの」
「アメ…食べてしまいたい…」


我ながら狂っていると思った。愛している相手に対して、そんな欲望を持つなんて。
もちろん本気というわけではない。でも、僕の中に確かに湧き上がった。それが怖かった。
それなのに、


「なぁに?ユキったらお腹すいてるの?」


なんて、冗談めかして笑ってしまう。
僕の感情に気づいていないのか、或いは、すべて見透かされてしまっているのか。僕には判断できなかった。でも、それでよかった。


「まあ、ユキになら食べられたって良いんだけど」


アメの腕には血が滲んでいる。僕はその傷跡を愛でるように舐めた。愛しい傷だった。
アメは優しく僕の頭にキスをする。そのぬくもりに安心して、また幸せを感じる。

不安で仕方ない。でも、アメはいつもその不安を取り除いてくれる。それどころか、僕を安心させるためにこの上ない愛をくれる。そうして僕は、アメからさらに離れられなくなる。

僕はそっと目を閉じた。アメの心臓の音だけを感じた。アメは僕を抱きしめる腕を少しだけ強くした。
時計の針が少しずつ時を刻んでいく。僕たちの日常は、何の滞りもなく続いていた。









end.









「食べてしまいたいです」「お腹すいてるの?」「馬鹿」「嘘。ユキに僕も食べられたいよ」という会話を真顔で繰り広げる狂ったアメユキに憧れて書いたらこんなことになった。














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