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桜が咲く頃。









春の匂いがする。視線の先には、洗濯物を干すユキの姿。季節が巡っても、この
光景は変わらなくて、自然と笑みがこぼれる。

柔らかい風。ユキは少し疎ましそうに髪をかきあげる。部屋の中からはハレとライの、楽しそうに喧嘩する声。変わらない日常。こんな日々が続けばいいど、願わずにはいられない。


「ユキ」
「アメ。何ですか?」
「いい天気だからさ。つい出てきちゃった」


ユキは笑って空を見上げた。青く澄んだ空。日射しが暖かくて。そう言えば、僕たちが出会ったのも、こんな季節だったなぁとしみじみ思う。


「部屋、騒がしいですね」
「二人仲良いから」
「仕方ない子達ですね」


ユキはそっと微笑んで、また洗濯物を手に取った。

太陽の匂い。こんな季節を、もう何回二人で過ごしただろう。そして、あと何回一緒に過ごせるだろう。


「来年もこんな風に二人でいられるかな」
「あなた次第じゃないですか?」
「え?」
「僕はあなたから離れる気なんてありませんから」


ユキはそう言って不適に笑った。僕はといえば、ユキの言葉に面食らってしまって、言葉がうまく出てこなかった。


「もう…ユキったら不意討ちなんてずるいよ…」
「ふふ、なんのことですか?」

「わかってるくせに、意地悪」
「好きなくせに」


ユキは可笑しそうに笑った。僕もつられて笑ってしまった。
僕はたまらずユキを後ろから抱き締めた。ユキは迷惑そうな顔をしたけれど、抵抗はしなかった。


「僕も、ユキと離れる気なんてないからね」



ユキは少し驚いたようにこちらを見たが、すぐにまた笑みをたたえた。そして、当然です、と呟いて、僕の腕を引き剥がした。その横顔は桜が咲いたようにピンクに染まっていた。










end











春ですね。












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あきゅろす。
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