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ワンルームストーリー。
 

※ヒーローアカデミー時代に同棲してた設定のアメユキ








ピンクのエプロンをつけ、シチューを作りながら彼の帰りを待つ。ほぼ完成に近いシチューを味見すると、まろやかな味が口内に広がった。我ながら完璧だ。そろそろアメが帰ってくる時間だろう。


「ただいま!」


言ってるそばから、間の抜けた声が玄関から聞こえた。外の冷たい空気が、狭いワンルームに流れ込む。

ヒーローアカデミーの入学と同時に、このマンションに二人で住むようになった。あれからもうすぐ一年。二人での生活が始まったときこそ不安だったが、案外やっていけるようで、僕はこの生活にすっかり慣れてしまっている。

アメは外気を纏ったまま、キッチンに立つ僕に背後から抱きついた。冷たい手が僕の腰に回る。もはやアメのこの行動も、いつの間にか日課になっていた。


「ただいま、ユキ」
「おかえりなさい。外、随分冷えているみたいですね」
「うん。すっごく寒かったよ!雪が降りそうなくらい!」
「そうですか。今日はシチューにしました。もう出来ているので、早く食べて温まってください」


出来上がったシチューを盛り付け、テーブルに運ぶ。友達二人でごはんを食べるには些か狭い、でも、恋人同士が食べるにはちょうどいい大きさのテーブル。
部屋があまり広くないため、試験期間中に勉強をするのも必然的にここになる。ここで勉強するとき、アメはノートをまとめるのもそっちのけで、僕をにやにやしながら見つめていた。二人で家具を選びに行ったとき、アメがこれと言って譲らなかった理由はこれだったんだろう。

顔を向き合わせて、お互いに温かいシチューを一口。アメは嬉しそうに笑って、おいしいね、と言った。不思議なもので、たったそれだけで何故か幸せを感じてしまう。


「ユキの料理はいつも美味しいね!」
「当然です」
「ユキがこのまま僕の奥さんになってくれたらいいのに」
「っ、」


アメがあまりに自然に言ったから、一瞬怯んでしまった。
確かにこの生活は幸せで、ずっと続けばいいと思っていた。でも、学生生活が終わってしまえば、この生活だって終わってしまう。
アメとは幼稚園の頃から一緒にいたから、離ればなれになるなんて想像もつかない。アメが言うみたいな関係は非現実的過ぎる。でも、ずっと一緒にいたいというところは同じだ。


「ユキ」
「…っ、アメ…」


正面にいたはずのアメが、いつの間にか僕の背後にいて、その上、包み込むように僕を抱き締めていた。肩に顎を乗せ、耳元で名前を呼ばれる。少しだけ真剣な声が、僕の胸を揺さぶる。


「なに考えてたの?もしかして僕の奥さんになる想像?」
「な…っ、違います!」
「じゃあ、僕たちが離ればなれになっちゃう想像?」
「、それは…」
「ユキってば、ほんとに可愛いんだから」


僕を抱き締める腕が強くなる。背中に感じるアメの体温に、安心すると同時に、少し泣きたくなる。
離れたくない。卒業はまだ先の話だ。でも、決して遠い話ではない。きっとすぐに訪れる現実。もしかしたら、この時間は二人で過ごす最後の時間なのかもしれない。だとしたら、やっぱり悲しい。


「僕、卒業してもユキといっしょにいるような気がする」
「なんですか、その自信は…」
「何となく、だけどね。でも、想像できない未来は訪れない気がするんだよ」


僕はユキと離ればなれになる自分を想像できない。
アメの何の根拠のない言葉が、僕の不安を溶かしていった。いつもなら鬱陶しいと言って振り払う腕を、今日は振り払えなかった。


「ユキ、こっち向いて」
「なに、っん…」


そっと頬に手を添えられ、優しくキスをされる。重なったその唇に、頭を撫でられるその手に、どうしようもなく安心してしまう。


「僕は、ずっと一緒にいたいな」
「…ん」
「ユキは?」
「…ぼく、も」
「じゃあ、ずっと一緒にいられるよ、きっと」


やっぱりアメの発言には根拠がない。でも、自信だけは満ち満ちている。僕は彼の自信を、なぜだか疑うことができなかった。それはただの願望かもしれない。でも、それ以上のものを感じてしまっていることは認めざるを得ない。

そして数年後、その自信が現実のものになることを、僕たちはまだ知らない。








end.









こんな同棲アメユキいかがですか。











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