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大人の夜とチョコレート※R18
 

※バレンタインでR18です
※アメが受け受けしい










チョコレートには催淫効果があると言われている。

でも、それはきっと微々たるものだ。僕と彼の関係には、些か物足りない。何より、アメはチョコレートを食べなくたっていつでもちょっと発情している(僕に対してのみだが)。だから、そんな生半可な催淫効果なんか要らない。僕が欲しいのは、もっと刺激的で、官能的な、大人の夜。だから僕は“大人のチョコレート”を彼に渡そうと思っている。



「ユキ、今何入れたの?」
「ハレにはまだ早いです」
「何それ。お酒?」
「お酒よりももっといいものです」


ハレがバレンタインでどうしたらライと距離が近づけるかと頭を悩ませていたので、僕はハレをチョコレート作りに誘った。いわゆる手作りチョコレートと言うやつだ。あまり手の込んだものだと酷なので、溶かして型に入れて固めるだけの、ごく単純なものを作ることになった。
僕はと言えば、ちょっと本格的な生チョコ作りに励んでいた。温めた生クリームを刻んだチョコレートの中に入れ、徐々にチョコレートを溶かしながらクリーム状にしていく。その過程で、あるものを入れた。可愛らしい小瓶に入ったそれは、僕たちの夜をいっそう素敵なものにしてくれるに違いない。
ハレがチョコレートを型に入れるのを横目で見ながら、例のガナッシュをクッキングペーパーが敷かれてあるパットに移し、平らにならしてから、ハレのチョコと一緒に冷蔵庫に入れた。


頃合いを見て、冷蔵庫からチョコレートを取り出す。ハレは出来上がったチョコにラッピングを施していた(が、危なっかしくて見ていられなかったので、結局僕が半分以上やってしまったのだけれど)。ハレは嬉しそうに笑って僕にお礼を言った。大したことはしていないが、こんな風に喜んでくれると、こちらとしても嬉しい。うまくいくといいですね、と笑って言ってやると、ハレは照れ臭そうに頷いた。

そして僕は、温めた包丁で生チョコを適当なサイズに切り分け、上からココアをまぶした。
出来上がった生チョコの一欠片を口に入れた。甘くとろけるチョコレート。ほんの少しだけ、体が熱くなる。我ながら上出来。あとはそれを丁寧に箱に詰め、きれいにラッピングした。

僕は出来上がったチョコを胸に抱え、そっと夜を待った。






***







夜になってもアメがチョコをねだってこないのは、ある程度の確信があるからだ。毎年僕がチョコレートをあげることはほぼ決定事項だから、特に焦ったりはしない。
とは言え、アメも朝から浮き足立っているようで、何となくそわそわしていた。ライとハレの恋路を応援する程度の余裕はあるようだったが、その度に僕に「ユキのチョコも期待してるからね!」という視線を向けてきて正直死ぬほどうざかった。

でも、やはり何を言っても恋人だ。いくらうざくったって、恋人の喜ぶ顔は見たい。僕はチョコレートを持って、アメの部屋のドアをノックした。


「アメ、入りますよ」
「ユキ!もう、ずっと待ってたんだよ!焦らしプレイなんて燃えるんだけど…!」
「はいはい、うるさいですね。言われなくても知ってますよ」


アメに手を引かれ、ベッドに座らされる。彼はご主人様を帰りを待っていた犬のように僕の訪問を喜んだ。もし、アメに尻尾があったなら、ちぎれんばかりにぶんぶん振っていたことだろう。今でも尻尾の幻が見えるくらいだ。


「ねぇ、ユキ…」
「わかってますから。はい、チョコレートです」
「ありがとう!ちなみにこれって…」
「手作りですよ。もちろん義理チョコでもないです。ちゃんと愛情も込めましたから、残さず食べてくださいね?」
「あああん!ユキ!今年は全然ツンツンしないんだね!逆にいいよ!それにそんな素直なユキも可愛いしね!!」
「無駄口叩いてないでさっさと食べなさい」


アメはラッピングをしゅるしゅるとほどき、生チョコをひとつ手に取った。そしてそのチョコを口に入れ、嬉しそうに笑う。僕が見たかったのはその笑顔だ。でも、それだけじゃ物足りない。もっと、違う表情が見たい。


「おいしいですか?」
「うん、おいしいよ!さすがユキ!」
「じゃあ、もっと食べて」


生チョコをまたひとつ、今度は僕が口にくわえる。唇ごとアメに差し出すと、彼は一瞬、怯んだ表情をした。
しかし、すぐにだらしない笑顔に戻り、チョコレートに僕の唇ごと食らい付いた。
チョコレートの、むせ返るように甘い匂いが、アメのキスから伝わって鼻孔に抜ける。ああ、僕まで酔ってしまいそうだ。


「ん、アメ…」
「もっと、食べさせて」
「んん、っ」


いつの間にか、三つ目のチョコレート。アメは僕の唇と同時に味わっている。
そして、四つ目に差し掛かったとき。アメの息が熱っぽいものへと変わっていった。


「っ、あれ…」
「どうしましたか?」
「ううん、何でも…」
「アメ?」
「ん、なんだろ、これ…体、熱い…」


…どうやら早速効いてきたようだ。チョコレートに忍ばせた“あるもの”とは、速効性の、いわゆる媚薬と呼ばれるもの(身体に害があるような物騒なものではない)。
アメの息が荒くなっている。僕を見つめる目が、熱に浮かされている。

なんて、愛らしいんだろう。


「アメ、辛いですか?」
「っ、ユキ、これ…なに…?」
「大丈夫ですよ。いつもよりももっと気持ち良くなれるお薬です…」
「…っ、ユキ…!」


そっと肩に手を置き、ぐっと力を入れてベッドに押し倒した。アメの驚いた表情に、思わず口角が上がる。彼は熱い息を繰り返している。その息を、唇で塞いで飲み込んだ。僕まで熱くなりそうだ。

アメは形だけの抵抗していた。いつもなら力で負けてしまうが、今日なら勝てる。
深く口付けると、アメはぎゅ、と僕の裾を掴み、切ない声を漏らした。


「っはぁ、ユキ…っ」
「チョコ、食べたんですから…今度は僕に、貴方を食べさせてください…」
「っ、ん…ぅ」


もう一度、今度は優しくキスをする。アメはとろりとした目で僕を見た。そんなアメの表情に、僕は確かに欲情していた。
するり、とアメのシャツの中に手を滑り込ませる。いつもはひんやりしているアメの肌が熱い。こんな熱になら、溶かされたい。


「っあ…はぁ…」
「アメ…気持ち良い?」
「ん、っこれ…だめ…っ」
「何がダメなんです?いつもより、何倍も気持ちいいでしょう?脳が痺れるみたいに…」
「っ…だめ、だよ…このままじゃ…」
「おかしくなりそう、ですか?」


ベルトを緩め、下着の上からアメの欲に触れると、既にしっとりと濡れているのを感じた。アメは掠れた声で喘ぐ。その声に、僕の中のサディズムがくすぐられる。
ズボンごと下着を下ろし、直に触れると、より熱を感じる。僕の冷たい手に、熱が移る。その感覚がたまらない。アメはアメで、僕の手に感じているようだった。
ほんと、かわいい人。


「ユキ、っああ…!」
「ふふっ、イきそう、ですか?」
「だめ…っユキ…手、離し、て…!」
「このまま、イってください…」


耳元で言ってやると、アメは背中を反らし、僕の手の中で達した。
その時のアメの恥ずかしそうな顔と来たら…ぞくぞくする。

僕はわざと煽るような目でアメを見下ろし、手についた精液を丁寧に舐める様を見せつけた。アメは息を呑んだかと思うと、また下肢に熱が溜まりつつあった。


「っ、はぁ…ユキ…」
「まだ全然元気そうですね」
「、体、変だよ…止まらない…」
「当然です。貴方だけ気持ちよくなるなんて、許しません」


僕は、ベルトに手をかけ、ゆっくりと服を脱いでいった。アメはその様をじっと見ていた。劣情しか持たない視線が気持ちいい。早く触れたいと言わんばかりの物欲しげな瞳が、愛しい。
シャツ一枚だけを羽織った状態で、アメに軽くキスをする。熱に浮かされているアメは、舌を出してより深い口付けを求めるが、僕はそれを拒む。おあずけをくらったアメは、切なそうに眉を寄せた。

僕は、唾液まみれの自分の指を、自ら後孔に埋めた。そして、腰を動かして、アメの昂りと僕の自身を擦り合わせた。欲情しきった瞳、かわいい。


「ユキっ、」
「っ、はあ…っん、今度は、一緒に気持ちよくなりましょう、ね?」
「ん、ねぇ、触っても良い?」
「、だぁめ…それに、そんな余裕ないくせに…っ」


互いの欲の先端から透明の液体が溢れて、ぐちゅ、と水音を立てる。後ろもだいぶ解れてきた。もう、アメを受け入れられる。と言うよりは、僕がもう限界だ。


「アメ、入れますね?」
「は…っん、ユキ…いい、よ…」
「ん、っ…熱、い…」


僕のなかを蹂躙する熱。頭がくらくらするくらい気持ちいい。僕は腰を動かし、自らを攻め立てた。
アメは声にならない声をあげて、快楽に耐えている。そんな姿に、また欲情する。

もっと、もっと、アメの乱れる姿が見たい。
僕はベッドの傍らに置きっぱなしのチョコレートを口に含み、アメに深く口付けた。


「んんぅ、っ!」
「ん、ぁ…ふ…アメ…おいしい?」
「はぁ、っ…あ…!」
「かわいい…」


チョコレートの甘い匂い。僕も次第に、熱に浮かされていく。

さっきよりも腰を激しく動かすと、アメは僕に手を伸ばし、ぐい、と引き寄せた。ぎゅ、と抱き締められた体は、互いの熱が溶け合って、どうしようもなく熱かった。
アメは下から僕を突き上げる。深く繋がったそこからは、ひっきりなしに水音が聞こえた。



「あ、ああ…っ」
「ユキ、っ」
「アメ…もうっ、」
「僕も、限界…っ!」
「ひ、ぁあ…!」


強烈な快楽と共に、目の前が真っ白になる。すべてを溶かしてしまうような熱が、体内に流し込まれる。アメは達したはずなのに、まだ大きいままだった。少し、媚薬の量が多かったかもしれない。

熱い息を漏らすアメの唇に、軽いキスを何度も何度も繰り返す。アメはされるがまま、それを受け入れていた。


「アメ…」
「っ、ねぇ、ユキ…」
「なんですか?」
「僕、まだ治まりそうにないんだけど」
「…僕も、です」
「今夜は離せそうにない」
「っ、」


繋がったまま、今度は僕が押し倒された。アメの、野獣のような瞳に、胸が高鳴る。


「朝まで、好きなだけ愛してください…」


耳元で言うと、アメは困ったように笑った。

刺激的で、官能的な夜。僕が望んだものは、確かにそれだった。でも、少し欲張りすぎたようだ。
まぁでも、たまにはこんな風に理性を飛ばすのも、良い。







end.






そして夜明けまで二人は溶け合いましたとさ。

しかしアメが受け受けしすぎた…











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