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憧れの人(アメユキ←クモリ)
 


※ヒーローアカデミー時代










きっと憧れ。もしかしたら恋。
そんな微妙な感情を、あの人に対して抱いている。

近づいてお喋りなんて、生まれつきコミュ障を患っている俺には出来ない。かといって、すっぱり諦めることも、やっぱりできない。
だから今日も、遠くから彼を観察。


「またアメと一緒にいる…」


アメは相変わらずユキさんに絡み付いている(アメも一応先輩だが、なんかムカつくから呼び捨てにしている)。

遠くからでもあの二人の存在は目立つ。何せ華がある。腹が立つほどに。俺なんか、手が届かないんだろうと悟ってしまうほどに。


「ユキ、さん」


自分の唇が彼の名前をなぞるだけで、どうしようもなく胸が高鳴る。
もし、ユキさんの隣が自分の居場所になったら。考えれば考えるほど現実から遠退いていくようだった。


「はぁ、」


ユキさんの笑顔を見ると、胸が苦しくなる。届かない相手に焦がれることが、こんなに辛いことだとは。

憧れなんて言い訳だ。これは恋。もうずっと前から気づいてた。陳腐な恋愛ソングが妙に心に刺さるようになった辺りから、疑惑は確信になりつつあった。気づかないようにしてたのは自分自身。悩んでるフリをして誤魔化していたんだ。
だって、まさか三次元の初恋が男だなんて。それに加えて、叶う見込みがほぼ100%ないなんて。そんなの信じたくないじゃないか。

甘酸っぱい感情に絶望が混じった感情を連れて歩き出した。苦しくて、下を向いたまま。すると、運の悪いことに誰かにぶつかってしまった。最悪。ああ、もう俺なんて消えてしまえば良いんだ…。

しかし、顔を上げて驚いた。


「ああ、すみません…怪我、ありませんか?」
「へ、」
「ちょっと、ユキが謝ることないよ!元はと言えばこの子が勝手にぶつかって…」
「元はと言えばあなたが調子に乗って僕にじゃれてきたのが悪いんでしょう?」


顔を上げると、目の前にユキさんが居た。もちろん、アメも。
間近で見ると、二人とも眩しくて、くらくらしてしまいそうになる。そして、ユキさんは言葉に出来ないくらい美人だ。


「あの、大丈夫ですか?」
「あ、えっと…すみません…大丈夫です」
「ねぇ、君。もしかして今ユキに見とれてた?そうなんでしょ!?いくらユキが美人でもそれは僕が許さなっぶはぁ…!」
「恥ずかしいこと言わないでください。…あの、気にしないでくださいね?この人馬鹿なんです」


なんだろう。この二人には隙がない。俺なんか、きっと入り込めない。

でも、この距離で見て気づいた。やっぱり、この人が欲しい。


「ユキ、さん…ですよね」
「え?ああ、そうですけど…どうして僕の名前を?」
「あああ!!やっぱり君もユキのこと…!!」
「アメ、ちょっと黙りなさい」
「…え、っと、目立ってるから、二人とも」
「そうですか…お恥ずかしい…」
「あの、ユキさん」
「何ですか?」


真っ直ぐに、綺麗な目で見つめられる。ああ、その眼差し、たまらない。


「また、お話してくれますか?」
「え?」
「ユキさんと、前から話してみたかったんです」


あくまで可愛い後輩を装って、言った。ユキさんは少し照れたように笑った。


「もちろん。僕でよかったら」


そう言ったユキさんは、とてもかわいくて。
ユキさんの後ろで発狂しているアメをよそに、俺は珍しく目に見えて浮き足立っていた。
校内で会ったら声をかけてくださいね、とユキさんは言ってくれた。本当はもうちょっと話したかったが、アメがユキさんを連れていってしまっため、それは叶わなかった。
でも、十分だ。

がんばったな、俺。持病のコミュ障を乗り越えて、がんばったな、俺!!

今度から、ユキさんを見かけたら話しかけよう。出来れば、アメのいないときに。そして、徐々に距離を詰めていこう。ユキさんを、俺のものにしよう。

恋をするのも良いものかもしれない。俺はスキップせんばかりに上機嫌に歩き始めた。恋が動き始めた瞬間だった。









end.









三次元の初恋が大学入ってからとか色々大変なクモリさん。
実はクモリが持病(コミュ障)を克服していくサクセスストーリーだったりして。











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