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だってクリスマス
※シニア

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今日コンビニ寄ろーぜ。
いつも寒いだの疲れただのと理由をつけて早く帰ろうとする元希さんには珍しいなあと思った。
俺は基本的に空腹を我慢することが嫌いだ。要するに積極的にコンビニ寄りたい派なのだ。

珍しいこともあるもんだ。
ただそう思っただけだった。

そういうわけで、近くのコンビニで俺はメロンパン、元希さんは肉まんとあんまんと牛乳を買って、すぐ隣にある駐車場の石に並んで座った。
正直こんな寒い中いつまでもこんな所にはいたくない。早く食って早く帰りたかった。でもちょっと嬉しい。なんか兄弟みたいだなあと思った。
とかなんとか俺は考えていたけど元希は食べるのに夢中でそれどころではなさそうだった。
暗い、寒い、沈黙、の三拍子ではなんともやりきれない上俺はもうメロンパンを食べてしまったので、なんで今日はコンビニに寄ろうと思ったのかと聞いてみた。
元希さんは以外と食べるのが遅いらしくまだ今やっと肉まんを食べ終わったところだった。
突然の質問だったがもちろんあわてて答えようとする様子はなく、十分に肉まんの余韻に浸り終えた後ぽつりとつぶやいた。
クリスマスだから。

ああ、今日はクリスマスか。言われるまで気がつかなかった。
わけはあるはずがない。もちろん知っている知っているとも。
でもクリスマスとコンビニを結びつけることは出来ないだろうと思った。
意味が分からないですと素直に言うと、まだ分からなくていいと言われた。
ますます分からなくて、そういう顔で訴えてみたけど元希さんは今度はあんまんに夢中で見ちゃいなかった。

やっぱり分からないので一人で考えていると、食べ終わった元希さんが立ち上がり俺に手を差し出した。
ごみ。
そういって俺の手の中でぐちゃぐちゃになっていたメロンパンの袋をぶん取って捨てに行った。
何だ、それは。
一応優しさなんだろうか。
またなんで。
クリスマスだからか?
よく分からなかったけど要はクリスマスだからという理由はなんにでも使えるんだろう。
一体どうしたのかと本人に聞いてみると案の定クリスマスだから、と答えた。
元希さんの妙な優しさに触れその後は普通に帰った。


家に帰ると母さんに怒られた。
クリスマスなんだから早く帰ってきなさいよと文句を言われた。
やっぱりクリスマスというのは分からない。

居間に行ったらもうなんだかいつもよりも無駄に手の込んだ夕飯が用意されていた。
しゅんはもう座って待っていた。
もう、クリスマスくらいとそのチビが言いかけたところでいい加減うんざりしたので頭をぶん殴ってやった。
いきなりの仕打ちに何が起こったか分からないという顔で俺をみてからまたぎゃんぎゃん言い出した。


とにかくクリスマスがプレゼントをもらう以外に特別な意味を持つということは分かった。
でも人によってそれは色々なんだろう。
元希さんがなんでコンビニに寄ったのかは、やっぱり分からなかった。






END
鈍感すぎる阿部

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