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アイマイモコ
06

家に帰ると、早々に気分転換に音楽をかけた。そして周りに聞こえてくるすべての音をシャットアウトするのにヘッドホンを付ける。
この前ヘッドホンを付けずに音量を大にしていたら、妹にコンセントごと引っこ抜かれたからだ。

「……」

あぁ‥でも、この瞬間が俺は一番落ち着く、つーか今日は何だか落ち着かなかった。
秋は機嫌が悪かったし、陸も知らない奴と親密な話しをしていたし、人間関係ってやっぱり俺にはイマイチ難しいよ。


「――もう、瑞兄ってば!」

「うわっ!」

音楽の世界にどっぷりと浸っていると、突如ヘッドホンを外され、耳元で妹の怒声が鳴り響いた。

「びっくりしたな!」

「さっきから呼んでるのにアホ面で音楽なんか聴いてるからよ」

「っていうか何の用……っ、」

ぎょっ…。

俺がそう問いかけた、すると妹が急に涙目になった。

「……っ、瑞兄ぃー!聞いてよ酷いんだよ、私の彼氏。今日は私とデートの約束をしてたのに、急にドタキャンしたのよっ!」

「は?」

「二週間前から約束してたのに、今日になって『友達と出掛けるから』とか、メールで送ってきたのよ、有り得なくない!?」

「……ドタ‥キャン?」



『悪いけど、先に帰れよ。』

『でも、俺達前から約束して…』

『それも今日はパス。友達が靴を見てほしいんだって』

『そっかぁ…──』



一瞬頭をよぎった記憶。




「ねえ瑞兄、聞いてるの!?」

「……え?あ、あぁ聞いてるよ。お前がドタキャンされたんだろ?そ、そんな男振っちまえば良いじゃん」

「それは出来ないっ!」

「…はぁ?だってドタキャンされてムカついてんだろう?」

「そんな奴でも、優しいところもあるし他にもいっぱい良いところもあるんだもん!簡単に振ることなんて…できないもん!」

「…‥」

叶わないなら諦めればいいのに、なんて健気な奴なんだ。はたまた諦めが悪いだけなのか。
諦めが肝心、退き際が肝心、とかそういう言葉もある。
だけどそう思って、俺が何に対しても諦めようとすると親も、前だったら陸も怒った。俺を想っての行動だというのはわかっていた。


俺が何の努力もしないから…

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