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アイマイモコ
17.終

「おはよう!瑞樹〜」
「笹川おはよ〜」
「昨日さぁ――」


「おはよ…」

はぁ…、みんなが決められたことしか言えないロボットのようだ。枠にハマりすぎるというか…いや、ハマってるのが悪いと言ってるわけではないけどそこからは個性が見えてこない。

それを考えれば、

「邪魔」

「え?」

「何で俺の席に座ってんだよ」

「…‥」

陸…お前はそういった枠にもハマらず、俺から遠ざかろうとする他の星の住人みたいだ。
もう瑞樹とは呼んでくれない。

陸は自分の席から離れた俺を見届けると、何事も無かったかのように無視して座った。
今日も一人の陸を、俺は今日もずっと見つめていた。だけど俺の視線に気が付くとふいっと顔を背けられてしまう。

もう、耐えられないっ。


「瑞樹、昨日のテレビ見た!?」

「………」

――耐えられない。

「瑞樹〜?どうしたの?」

――嘘つきたくない。

「おーい」


――殻を破りたいっ!




「陸っ!」

「……っ、」

俺はクラスの連中のいる、この教室で陸を抱きしめた。
目を開いて驚いたのは陸だった。しかしそれも一瞬のこと、我に返った陸は俺を引き剥がそうとしていた。だけどこの抱擁だけは解くつもりは毛頭なかった。

陸は俺だけが守ってやる。


「笹川、お前何やって…」

「…お、俺は抜ける!もうお前を無視するのは止める」

「…何言ってんだ離せっ」

「いやだ! 陸。俺はやっぱりお前だけは忘れることできない!中学卒業しても一度だって忘れられなかった」

「っ、」

身を捩る陸を離すまいと、力強く抱きしめる俺。周りには陸をこれまで無視していた男子と女子たちがそれぞれ立ち尽くしていた。
それはそうだろう。ただでさえ無視されていた陸に構っているのに、その上男が男に抱擁をしていれば誰だって唖然ともするだろう。

そんなヤツらを目の前に、俺は陸を抱きしめながら言った。


「俺はもう、このバカげたシカトを終わりにする」

「‥……」

「俺は、宮沢 陸が好きだ!」


瞬間、ザワァと男子と女子は声をあげた。それが、喜んでいたのか抗議をしてたのかは今となってはよくわからない。
だけどそれでももう良い。俺は後悔する事をやめにしたい。もう終わりにするんだ。


「――…の野郎」

だけど、改めて決意を固めた俺は気づいていなかった。クラスが大騒ぎしている中、片隅では一人歯をギリッと噛みしめていた男がいたのだと…


そして…―




 ・
 ・
 ・

「おはよー!」

「……‥」

「え?おい…どうしたんだよ」

「………」



――次の日から、俺への嫌がらせが始まることになるなんて思いもしなかった。

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