アイマイモコ
17
『住所録を見て手紙を送ったんだけど、返事がなくて直接家に電話をかけたら、親らしき人が出て‥陸ならいません──って、それっきり音沙汰なし…』
2日前の同窓会で、陸が来ないと教えてくれた幹事の奴が、そう教えてくれた。
いません、て…陸が出掛けてたからいなかったのか?
でもそれだったら帰ってき次第、親が陸に教えて折り返しかけ直す筈だもんなぁ…?
「──だからって、なんで俺がお前なんかと喫茶店でお茶しねぇといけないんだよ!」
「…だから、陸がさぁ‥」
「あーうぜぇー!」
「…」
雄大って、相変わらず俺には冷たいよなぁ…。もう少し、仲良くしようよ?
「ていうか、さっさと用件だけ言ってくれない?‥ホントにお前ってグズだよなぁ?」
「……」
(だから、仲良くしようよ…)
雄大は腕と足を組んで、優雅にコーヒーを啜っていた。とても朝早くの光景とは思えない。
まぁ、朝早くから呼び出されれば気分は良くないだろうけど──そんな冷たい雄大に溜息が出つつ、奴の言われるまま、俺は早速本題に入った。
「頼む雄大、陸の携帯番号を教えてくれないか?」
「はぁ?」
俺が頭を下げると、雄大の啜っていたカップの手が止まった。
「分かってる!俺にそんな資格ないのは分かってるんだけど…一生のお願いだっ!」
「……」
「…‥雄大?」
雄大に両手を合わせて、頭を下げ続けているのに、雄大に動きどころか声すら聞こえてこなくて、俺は思わず確かめるように、視線を雄大に向けた。
すると、
「お前の一生のお願いってさー、あと何回くらい続くんだ?」
「…え?」
「やっぱり、瑞樹に期待した俺がバカだったって事だよ!」
「雄‥大?」
また雄大の目が冷たくなった。
「お前さー、何の為に陸の学校に転校したんだ?」
「…っ、」
「俺に何をお願いするのかと思えば“陸の携帯番号教えろ”って、すげぇーあり得ねえ」
そう言った雄大は、呆れたように髪を掻きあげると「マジ有り得ない」と、今にも消えそうな声で呟いていたのだ。
それはそうだ。
陸の事を中学生の頃から心配していて、常に俺に敵意を剥き出しにしていたくらいの男だ。
誰よりも陸の事を考えていた。
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