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アイマイモコ
04

「陸、帰ろう?」

「………‥」

しまった、逃げ遅れた。
自分に呆れて額に手を乗せた。
取りあえず無視しようと、瑞樹の横を通り過ぎようとした。

――が、


「つかまえた」

「っ、」

「やった!俺の勝ち。ねぇ陸、一緒に帰ろう?」

「っ、何なんだよ離せ!」

「だって…陸、休み時間になる度にどっか行っちゃうじゃん」


――……‥。

確かに間違ってはいない。
休み時間に入る度に俺への視線が鬱陶しくて、最近では屋上以外にも逃げ場所を作った。
けど孤立した俺には、それを誰に咎められる謂われもないし筋合いだってないはずだ。
そう思いながら、瑞樹に強く掴まれた腕を振り払って言った。

「お前っ…、こないだから何のつもりだよ!俺が居なかったから、ってなんだよっ!」

「…え?」

「いい加減にしろ!」

「陸…‥」

早く行けよ、鬱陶しい。
もう俺に構わないでくれ…。


「…――キス、したじゃん」

「はぁ?」

「俺たち、たくさんキスしたよね?初めてのキスに、陸は初々しい反応ばかりしたよね?」

「…っ、」

「だけど、セックスを求めたら俺を突き飛ばしたよね?」

「…‥やめろっ!」

瑞樹は遠くを見つめるようにそう言った。コイツは何で今更そんな事を言ってくるのかなんて、考えたくもない。
現に、俺を二度も裏切ったのは間違いないんだから。

もう相手になんかしない。

「バカじゃねぇの。あんなの、青春の過ちだよ!こっちは今じゃ、お前と恋人になったことを後悔しない日はないんだよ」

「‥………」

「そんなに一人になるのがイヤなら転校すれば?あーあ、あんな事クラス中に言わなきゃ良かったのになあ?」

「‥………」

「じゃあな。さよなら〜」

そう言ってカバンを手にした俺は教室の扉に手をかけた。

少しは世の中そんなに甘くないことを思い知るが良い、と心の中でヤツを罵ってやった。
お前なんか、本当の苦しみも苦労も知らないクセして分かったフリなんかしやがって。結局おまえは、無視してたヤツに話し掛けた自分に酔ってるだけなんだ。

俺は‥母さんが死んでからそういう奴を何人も見てきた。
同情するのは最初だけ。
だけど影では人の悪口ばかり言って必要なくなったらさっさと切り捨てるんだ。

お前と一緒じゃん。



『――付き合ってる?俺と陸が!?あはははは、冗談やめろよ。あんなつまんない奴と付き合うわけないだろ!?』

『違うのか?』

『あったり前だろ!アイツ男だぜ?キモイ事言うなよ!』

『だよな?!キモいよな?』

『けど瑞樹。仮にも友達に“つまんない奴”はないんじゃねぇか?あははは!』

『良いんだよ〜!陸は、アイツは別に友達じゃないんだから!』


所詮はお前もそうだったんだな、と全てを捨てた日。

それが母さんの命日だった。

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あきゅろす。
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