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アイマイモコ
03

「あれれ?居たんだ」

「………」

「おーい、陸ちゃーん?まーたご機嫌斜めで屋上に逃げてきたんですかあ〜?」

「わざと無視してたのに…。安眠妨害だからどっか行け」


屋上を入ってすぐ右の金網フェイス――そこが俺の指定場所。
一人になりたい時はいつもここに逃げてくる、というより静かな場所に行きたいだけ。
それなのに、ヘラヘラとこっちに向かってくる男はそんな事もお構いなしに俺に近付いてきた。

「冷たいねぇ。前までの明るさはどこへ行ったのかしらぁん?」

「……、」

「うわ、こっわ〜」

河野内がそうやって茶化すように言う時は、大抵本当に怖がって言ってるわけでないことは既に分かっていた。
つくづく鬱陶しいヤツだ。


「陸ちゃん、そんな顔してるとますます孤立しちゃうよ?」

「気安く呼ぶな」

「へーいへい。――あ!そういえば宮沢、お前昨日家に帰ってきたんだってな?」

「お前が言ったんだろう、親父が俺に用があるって!けど行くだけ無駄だったよ」

「あー…そういえば、昨日親父とお前がケンカしたって家政婦が今朝言ってたな」

「向こうが大人げないだけだ」

「宮沢さー、仲良くしろとは言わないけどもう少し親父とまともに会話出来ないかなあ?」

俺とあの父親とは昔から反りが合わなかった。
何せ物心ついた頃には、自分たちには父親なんかいないと思っていたくらいなんだから。

「お前に関係ないだろっ!」

「……‥」

「それからさ、お前の母親も何とかしろよ。 昼っ間から酒浸りな上に、人に絡んで嫌み言って楽しんでるような暇人に付き合いきれねぇよ」

「相変わらず仲悪いね」

「仲良くするつもりもない」


――あんな男も女も大嫌いだ。

「宮沢。せっかくの家族なんだからさー、もうちょっと仲良くしようよ、な?」

「あんなの俺の家族じゃない!」


――あんな家も大嫌いだ。

母さんにも巧にも嫌な思いしかさせないような奴らなんて…!
俺は絶対に許さないからな。
隣にいた河野内は、そんな俺を横目に溜め息を尽き言った。

「はぁー。素直に河野内家に来れば、宮沢だって一生遊んで暮らしていけるのに。バイトなんて面倒な手順踏まないでさ」

「あんな家、死んでもお断りだ」

「それに巧クンだって、あの世できっと宮沢の心配してるぜ」

「っ、てめぇ!巧の話しはすんじゃねえよっ!」

「……‥」

「もうあっちに行けっ!俺にその面見せんじゃねえよっ!」




 ・
 ・


再び一人になった陸は、真っ青な空に囁くように話し始めた。

「――母さん、巧。俺のことなら全然心配要らないよ?ばあちゃんにも、あんなクソ親父にも、誰にも頼らないで一人で生きてみせるからさ」



――もう誰にも頼らないよ。

そう。瑞樹に裏切られたあの日から、俺はまるで目が醒めたように誰かと並び立って道を歩むという希望を全部捨てた。

少しでも信じた俺がバカだった。

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