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アイマイモコ
01


陸、お前はすごいと思うよ。

あんな境遇を生き抜くお前を、俺は本当にすごいと思うよ。
今まで自分がどれだけ酷いことをしていたのか、今になってようやく実感したんだ。
本当に都合の良すぎる頭だ。

自分がこうなってから、俺は何とか教室の中心を、一人生き抜こうと思っていたのに、俺は、挫けそうだよ。


助けて、陸。


 *






act.6 宮沢 陸



(―…憂鬱だ)

足を傾けたのはこの辺では割と大きめの一軒家だった。
インターホンを押すと、機械越しから返事が返ってきて扉は開いた。機械から聞こえてきた人の声に、俺は眉を顰めていると当の本人が出てきたことでさらに眉をピクリとさせた。

「あら、お久しぶりね陸くん?」

「…どうも、ご無沙汰してます」

「で?今日は何の用かしら?」

まるで女王のように、昼間からワインを片手に持ちながら人を見下したような話し方をする。
だけど俺は怯まずに言った。

「あの人に呼ばれたんです」

「あっそう。それなら寝室に行くと良いわ。あの人、さっき仕事が終わったから寝室に行くって言ってたから」

「…そうですか。失礼します」

「私はまた、陸くんがこの家に戻りたいとかバカな事言うのかと思ったわぁ〜!あぁ良かった!」

「…っ、」

相変わらずイヤミな人だ。
こんな人を俺は義母さん、だなんて呼びたくもないから一度も呼んだことはない。――否、端っから呼ぶつもりもないけど。
あっちも俺の態度が気に入らなかったようですれ違い様に、可愛げがない子ね、と呟いた。
でも気にしない。だってそれもいつものことだから。

――俺は、いつだって一人ぼっちだったから…





「陸、久しぶりだな〜」

「俺は別にあんたなんかと久しくもしたくないけどな」

「冷たいな陸は。それにしても陸、ちゃんと食べてるのか?また少し痩せたんじゃないのか?」

「父親面すんなっ!母さんをさっさと捨てて知らん顔した甲斐性なしのくせしやがって!」

しかも籍も入れてなかった。
ちなみに俺の“宮沢”と姓は俺の本当の母親の姓だ。けど、今はそれで良かったと心から思える。
あんな甲斐性のない男の苗字なんか、俺は名乗りたくなかった。


「はぁ…、なぁ陸。宮沢のばあさんから聞いたぞ。お前まだ、宮沢の姓を名乗ってるらしいな」

「戸籍上では俺は宮沢だ。それに、変えるつもりもねぇし」

「それだけじゃない。あのばあさんに金まで渡してるそうじゃないか。 バイトをするくらい切羽詰まってるならウチに戻って来い。な?陸」

何が“聞いた”だ。
ばあちゃんから強引に問いただしただけクセしやがって…!
ばあちゃんが、自分の娘の人生を狂わされた男なんかに、そんな話しをするわけない。しかもその偽善ぶりだって、てめぇがただ、自分の地位を守りたいだけなんだ。

「あんたの口からお金、なんて言うんじゃねぇよ。あんたが言うとワイロにしか聞こえねぇよ。それに勘違いするな!渡してんじゃない、返してるんだ」

「…‥父親に向かって、随分横柄な態度取るじゃないか?」

「はっ。てめぇを父親だなんて思ったことねぇんだよっ!」



パンッ

「…‥」


気に入らないとすぐ手が出る。
横柄なのはどっちだよ。

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あきゅろす。
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