アイマイモコ
23.終
──ピンポーン
「…‥っ」
おばちゃんの何度目かの呼び止めでようやく思案にしていた意識を取り戻した。
俺はおばちゃんにお礼を言うと、今度は1人で宮沢家の前まで来てインターホンを鳴らした。
(はぁー…)
だけどそんな緊張の渦の中、宮沢家の横開きの扉はガラガラと音をたてて開かれた。
もし陸だったらすぐに閉められちゃうと思い、手に力が入ってたが出てきたのは年配のおばあさんだったので少しホッとした。
「……」
しかも優しそうな人だ。
「あの…どちら様?」
「っ、あ、すいません!俺、陸くんと同じクラスメートの笹川瑞樹と言います」
「…まぁ、陸の‥?」
「あ、はい!今日陸くんが学校をお休みしていたので、担任からプリントを預かりました」
「……そう‥ですか」
(…あれ?)
多分、陸のおばあちゃんなんであろうその人は、俺がそう言うと途端に悲しそうな顔をして自嘲気味に笑った。
どうしたんだろう?
俺が小さな疑問を抱いているとおばあちゃんの口が開いた。
「…ごめんなさいね?折角来てくれたのに申し訳ないだけど、陸はここにはいないのよ?」
「…え、いないって…?出かけてるとか…ですか?」
しかし俺の質問に、おばあちゃんは小さく横に首を振った。
「…‥あの‥?」
「…‥陸は、ここには住んでいないんです。あの子は今一人暮らしをしてるんです」
「一人‥暮らし‥?」
──まただ。
また、俺の知らなかったアイツが出てきた。
「あの、因みに誠二さんと言うのは‥どなたなんですか?」
「“誠二”というのは、私の主人で、あの子の祖父です」
「…‥」
ずっと俯いていたおばあちゃんの目に、うっすら涙が浮かんだのを俺は見逃さなかった。
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