アイマイモコ
21
だけどそう思っていた矢先の次の日、陸は欠席をした。
みんなはこれ見よがしに陸の事を女々しく愚痴っていた。
だけど、俺はその輪には入ろうとはもう思わなかった。
「笹川」
俺がみんなの様子を遠目から見ていると、担任が俺に「ちょっと」と、手招きしてきた。
「はい?」
「…悪いんだけど、これを宮沢の家に届けて貰いたいんだ?」
「…え?」
「本当は先生が行かなきゃいけないんだけど、緊急会議になっちゃって行けそうにないんだ」
「…‥」
「いやぁ、予定があるなら無理にとは言わないから…」
「‥あ、いえ!俺が行きます!!分かりました──」
実を言うと、先生は陸がクラスの奴らと上手くいっていないのを知っていたらしい…
だから、最近、陸と個人的に話し合いを設けたんだけど、本人はにっこり笑って「そんな事ないです」と、きっぱり否定したそうだ。
先生も陸にそこまで断定されては、もう何も言えまいと口を噤んでしまったそうだ。
「──と、軽く引き受けたのは良いけど、俺もアイツとは全然話してないからなぁー…」
それに俺は地図を開いてはみたものの、さっきから同じ方向をぐるぐる回ってたりする──所謂、方向音痴というやつだ。
だって、住宅街ばっかりでみんな同じ家に見えるんだぜ?
初めての行く場所など分かるはずもないので、
「すいません、この辺に宮沢さんのお宅ってありますか?」
「宮沢?…あぁ、誠二さんの所の宮沢さんかな?」
「は、はぁ‥多分‥」
近所の人に訊くことにした。
その人は買い物帰りなのか、買い物カゴをぶら下げて人当たりの良さそうなおばちゃんだった。
おばちゃんは俺を見るなり自分の持っていたアメやチョコを分けてくれた。俺、ガキみたい…
「ねぇ?お兄さんって、もしかして陸くんのお友達?」
「…‥え、えぇ、まぁ…」
咄嗟にウソを付いてしまった。
だけど、見ず知らずの人に「今は友達じゃありません」と言うのもなんかおかしいので、取り敢えずここではそう言っておくことにした。
「あ、だったら、陸くん今ここにいないんじゃないかしら」
「…え?」
渋った顔をしたおばちゃんが、突然俺にそう言った。
だけど俺の顔色を見たおばちゃんが慌てて訂正した。
「…あぁ、はっきり決まった訳じゃないんだけど、ただ、最近陸くんを見かけなくなったから、この家には居ないんじゃないかな?って推測しただけなの」
「…は、はぁー」
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