アイマイモコ
20
『俺はな、お前みたいな奴が一番大嫌いなんだ!』
『…‥』
もしかしたら、あんなにはっきりと自分に対しての好き嫌いを評価されたは、家族以外では雄大が初めてかもしれない。
「人って難しいな…」
学校の前で、雄大と別れてから教室に向かうと、いつも通り1人ぽつんとしている陸がいた。
財布の一件からますます孤立している筈の陸は、てっきり今日は休むのかと思っていた。
「宮沢くん…」
「……」
だけどおかしいのは、昨日まで普通に話していた女子にさえも、話しかけられても視線をこちらに寄越さず、実に態度が悪い。
「──おはよう瑞樹。…何?まだ陸が気になるの?」
「…っ、べ、別に!人の財布を盗もうとする奴なんて知るか」
「意地っ張り…」
「…え?」
「なんでもない」
俺の隣にやってきた秋が不意にそう言ってきた。
内心、ドキッとした俺だけど、あんな奴気にしてないと主張すると、秋はボソッと何か呟いた後「へぇー」とつまらなそうに返事をして教室を出て行こうとした。
「秋、どこ行くんだ?」
「トイレ」
「……」
(秋、なんか機嫌悪い…?)
・
・
・
「陸‥」
「…‥」
「ちょっと待ってよ、また無視するわけ?…‥あっそ、良いよ?俺、みんなの前で陸の事押し倒したって言うから」
「…高野っ、お前‥」
「俺はそんな事、別に恥ずかしくなんかないんだ」
昼休み、陸が教室を出ようとすると横引きの扉の前で待ち伏せしていた秋に手を引っ張られた。
秋を無視して行こうとするも、向こうの言い分に言葉を詰まらせた陸は渋々、秋に腕を引っ張られるまま付いていくしかなかった。
「陸、元気?」
「……」
「って、元気なわけないか…。お前少し痩せない?」
「…‥っ、お前よく平気で声かけられるよな?マジで止めろよ。正直、俺はお前なんかともう話したくないんだ」
「どうしてだよ!」
「高野、こないだ俺の気持ちは分かったって言ってなかったっけ?俺はしつこい奴は嫌いだ!」
元は親友だった2人。
そんな秋に陸はそっけなくそう言って横を通り過ぎて行った。
驚きを隠せない秋は、ただただ通り過ぎていく陸を見つめることしか出来なかった。
「陸‥」
「この話しはもう終わりだ!俺に裏切られたと思うなら、もう俺には近寄るな」
「…‥」
「あっち行けよ。お前たちの顔なんか見たくない」
──陸は、中学の頃から笑顔を絶やさない奴だった。
そして雄大は言った。
「陸が笑わなくなった」と…
なぁ陸?お前はいつも教室の窓から映る真っ青な空を見て、何を考えていたんだ。
ただの暇つぶし?
それとも、みんなから目線を逸らす為のカモフラージュ?
どうしてもソレだけは、陸の残像だけは、今でも見え隠れして俺から離れないんだ。
なぁ陸、お前はどうして1人になろうとするんだ?
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