アイマイモコ 10 「イチゴうめぇな!」 「あははは!やっだぁー宮沢。頬張り過ぎだよぉ!」 「なにおぅっ!お前たちもこのエリア食って見ろよ。ここ結構良いスポットだからさ!」 「スポットって…宮沢の物かっつーの!……‥って、あらっ!結構美味しいわね?」 「だろだろ?!」 「…‥」 …あいつ、今の自分の立場わかってんのかよ。 お前はクラスのほぼ全員にシカトされてるんだぞ!? 「はーい、4回目!」 「……は?」 秋は親指を折って、4本の指を俺の前に差し出すとにやりと笑って言った──。 「瑞樹が陸ちんを見た回数!」 「…!!」 はぁ、またかよー…。俺、一体何やってんだろう?? どうやら俺が無意識に陸ばかり見ていたのを、秋に見られていたらしい…‥。 俺は、内心舌打ちをして、歯を食いしばりたくなるほど悔しかった。 それは“俺が”“アイツを”意識してしまうからだ。そうじゃなくて“アイツが”“俺を”意識させてやりたいんだ。 俺が、陸に翻弄されてるという事実が許せなかった。 「よく見てるよなぁ…」 「まぁね。これでも一応、瑞樹の恋人ですからね!」 「……‥」 「…ん?‥何?瑞樹」 「あ、いや、別に…」 秋に言えるはずがない。 一瞬、秋と恋人同士だということを忘れてたなんて… 「さ、さすが俺の恋人!」 「でしょでしょ!?」 「いやぁ〜俺の恋人がお前でホントに良かったよ」 「おぉ〜もっと褒めてぇ!」 「……お、おう!」 俺の肩をポンポンとご機嫌そうに叩いた秋。 俺は、一瞬でも恋人だということを忘れてた。その上、秋の話しにも空返事ばかりで見当違いにも、自分から何mも離れた場所で女子とイチゴを摘んでいた陸に視線を向けていた。 決して秋の話しがつまらなかったわけではなく、ただ、純粋に陸が無意識に気になってしまったからだろう‥ 「…‥」 陸を嫌いになったり気になってみたり、俺の心はいつでも忙しなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |