アイマイモコ
03
「なぁ‥秋、みんな少しやりすぎじゃないかな?」
「……そうか?」
今朝、ホームルームで遠足のお知らせが配られた。
まぁ所謂、みんなと親睦を深めましょう。という学校側が企画した遠足らしいのだが…
さっきの体育の授業での陸の平然とした態度がみんなには気に入らなかったらしく、誰も陸をグループに入れるのをやめようと言っているのだ。
「お前達も、やりすぎだぞ?いくらなんでもこれじゃ‥」
「瑞樹は優しすぎるよ!陸にあそこまで言われてて悔しくないのか!?」
「そ、それは…」
そりゃ悔しいよ!陸の学校を探し当てて転入してきたのに、進展するどころか…友達からも格下げされちまったんだから…
俺はただ、あの頃の事をすべて水に流してもう1度やり直したいだけなのに、陸は一体何が不満だと言うんだ!?
「悔しいだろぉ?だから、仲間外れにするんだよ!」
「……」
陸を外すと言ったら、後ろでは女子が「ガキみたーい」と男子に皮肉をぶつけてきたのだ。
意外にも女子の方が、男子よりも大人で、陸を無視すると言った時も誰ひとり参加しなかった。
──実は、これも男子が陸を無視するようになったもう一つの要因なのだ。
この数ヶ月、陸を見ててわかったのだが、やはり陸は結構女子に人気があるらしいのだ。
何気ない気配りや会話が明るくて楽しくて優しい口調をする。それが女子たちの好感を得ているのだ。
男子たちは、それが気に入らなかったらしい…
クラスの“ほぼ全員”と言ったが、その“ほぼ”と言うのが陸をシカトする男子にまったく興味を持たない女子達のことだった。
「俺達の方がガキみたいだ…」
「そんな事ねぇよ!瑞樹!」
「くっだらなーい」そう言うと女子達は陸をグループに快く迎え入れていた。やっぱり陸が今でも、女子にも人気があるのは変わらなかった。
「宮沢くーん!男子なんてほっといてこっちにおいでよー!」
「…え?あ、あー‥」
すると、保健室に行ったはずの陸が着替えを終え、スポーツバックを抱えて戻ってきていた。
何があったのか分かっていない陸は女子の誘いに間の抜けた返事をした。
向こうは楽しそうだなぁ…
「…っ、」
なんか…
なんか……
なんか…他人に笑いかけている陸を見ると、無性に腹が立つ。
何、へらへらと女の子に愛想振りまいてんだよっ!
俺にはそんなに優しい笑いをしなかったじゃん!
そんな陸を直視できなかった。
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