アイマイモコ 02 「……」 陸は、いつもの仲間たちに声をかけようとするも、陸なんて初めからそこにいなかったかのように、素通りされてしまった。 少し驚いた顔をしていた陸だったが、すぐに自分の立場を理解したらしく、自分の席に黙って戻っていった。 「……ぷくくく。シカトされてやんの!ダセェ!」 案の定、それを見ていたクラスの1人が、陸を見ながらクスクスと笑っていた。 そして伝染するようにその笑い声は次々に広がっていく。 「……」 だけど…1人で頬杖を付いていた陸は、1度はこちらを振り向いたのだが、それっきりこっちを向くことはなかった。 その後ろ姿が、少しだけ切なく思えて仕方なかった。 ・ ・ ・ 「じゃあ各チーム2人に分かれて準備体操をしろ」 授業は体育の時間になった。 先生がそう指示をすると、俺は秋とチームを組んだ。 他の奴らもパートナーを見つけたらしく、次々にチームはどんどん出来ていった。 しかしよく見ると、隅っこの方では未だにパートナーを見つけられず1人で立っている陸がいた。 本当は3人組になろうと思えばいくらだってなれるのに、みんなは陸に対して知らん顔をしてまた話しを始めてしまった。 そして俺もその1人だった。 「なんだぁ宮沢、お前相方が誰もいないのか?」 「……」 「じゃあ、先生と組むか??」 「……」 いつのまにか、響いてくる声が先生と陸のみになっていた。 その声と、孤立した陸を見て、またしてもみんなは小さな声でクスクス笑っていた。 まるで小学生みたいだ。 しかし周りの嘲笑う奴らに反して、陸が言った一言がみんなを唖然とさせてしまったのだ。 「──いいえ先生、俺、具合悪いので保健室に行ってきます」 「……は?おいっ、宮沢?」 「それじゃあ」 「ちょ、宮沢!?」 パタン──と扉の閉まる音がすると、先生は今まで見たことのない陸を見たように目を見開かせていた。 そしてみんなも、暫しその場から動けないでいたのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |