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アイマイモコ
08

最後のHRが終わると俺は勢いよく席を立ち上がり、今度こそ逃がさないと言わんばかりに陸の側に駆け寄った。

「陸っ…!」

「……っ」

すると、鞄に教科書を詰めていた陸の手が止まった。
それは当然だ。だって今、1年ぶりに突然俺に声をかけられたんだから。

「久し振り! はぁー、やっとお前と話しができた」

「…‥」

「……陸?…少し、話があるんだけど良いか?」

「…‥っ」

少し戸惑いを見せた陸だけど、無言でこくんと頷いた。
思ったよりもあっさりと陸と話しができる事に少し拍子抜けはしたが、これでやっと陸との友情関係の復活にも近付けたから俺には都合が良かった。

そして俺は、放課後遊びに行くと言ったクラスメートを待たせると、陸と一緒に屋上へ向かった。





「元気にしてたか?」

「…‥‥ま、まぁ」

「俺さー、今朝陸に無視されたから人違いかと思ったよ」

「…‥わりぃ、目が悪くて…」

俺は嬉しくて、つい満面な笑顔で陸に話しかけるのに、一方の陸は俺と再会したと言うのに緩く笑ってはいたが、顔は強張っていて俺に目線を合わせようとしなかった。しかも返事は必ず「まぁ」か「あぁ」か「わりぃ」ばかりだった。

「…陸?俺と再会したのに嬉しそうじゃないな?」

「…‥え?」

「だってお前嬉しそうじゃないし、顔も強張ってるし!」

「…っ、そ、そんな事ないよ!う、嬉しいよ‥」

陸はそう言ってさっきよりも深い笑みを出してくれた。その表情に俺は昔の陸を見たみたいでまた嬉しくなって陸の手を握ってしまった。

「陸?これからも宜しくな!」

「……っ、あぁ」

陸がまた、はにかんだように笑っていたのをこの時の俺は気付かなかった。

そして俺はある事を思い出し、陸に訊ねた。

「あ、陸!今日さ一緒に帰らないか?」

「…‥」

「俺さー、早速友達が出来たんだけど、そいつらとこれから帰るんだ!だから陸も……」

「悪いけど!…俺、バイトがあるから一緒には帰れない!」

陸は俺が何を聞こうとしたか分かったみたいで俺が最後まで言い終わる前に、きっぱりと断られてしまった。
やっぱりみんなが言っていた通り、バイトという理由で断るというのは本当だったみたいだ。

──しかし、それが俺だったら断らないんじゃないかと、心のどこかで期待していた…


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