アイマイモコ
04
それから数分後──
なに事もなかったような顔をして戻ってきた陸は、そそくさと授業の準備を始めた。だけどその際、一度も俺の顔を見ることはなかった。
それが俺の胸を少しだけ、チクリっとさせる。
「…‥陸…」
「――気になる?」
「……は?」
またしても、後ろから俺の机に肘を付いた高野が、声をかけてきた。俺は髪を掻き上げると陸に目線を向けながら高野の話しにも耳を傾けた。
「陸だよ。だって瑞樹、さっきから陸ばっかり見てるからさ」
「…べ、別に、そんなんじゃないよ!」
「…‥え?」
本当は、さっき陸も笑って手を振り返してくれるとばかり思っていたのに、おもいっきり無視されてしまったから少し落ち込んだ。
確かに恋人としてはもう別れたから気まずいんだろうけど、友だちに戻ろうと言った時、陸は「うん」と頷いてくれた。
俺はそれを信じていた。
「…‥」
「瑞樹、どうしたの?」
「…あ…いやぁ、俺さー、転校初めてだったから緊張したんだよ!」
「えー!?瑞樹、メチャメチャ堂々としてたじゃん」
失礼な奴だよ!俺だってそれなりに緊張したんだよ!でも自己紹介が終わったらそうでもなくなったけど。
「…‥瑞樹?」
「…ん?」
「困った事があったら、なんでも相談しろよ?」
「…え?…あ、うん」
ちょっと‥びっくりした。
出会って間もない俺に、高野が嘘をすぐ見抜いていたんだ。
だけどそれに気付いたからと言って、高野は茶化すでもなく変に真剣にでもなく、俺の落ち込んでる理由も聞かずに相談しろよと言ってくれた。
それだけでさっきまでの憂鬱な気持ちはなくなり、少し明るくなれた。
「…秋。ありがとうな!」
「…っ!‥うん!」
「「……」」
──ぷっ!
「…‥ぷはははは!」
「…あははは!やっと名前呼んでくれたね?」
気付けば、自然と口に出していた秋の名前──
俺と秋は改めて目を合わせると、思わず照れたように噴き出して笑ってしまった。
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