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アイマイモコ
18.終

「はぁー」

こうして溜息を吐いても、俺の中の世界は変わらない。
残るのは虚しさだけだ。
父親に殴られた頬を指でなぞると、か細く息を吐いた。
そして屋上のコンクリートの床にゆっくり寝そべった。

あぁ眠い…。
けど眠いのに眠れない。


夏休みももう間近だ。

ばあちゃんに会ってこようかな。
でも、あれだけ迷惑かけたのに今さらどんな顔で会えばいい?
雄大とも音信不通だし。
てか、俺が勝手に着信拒否にしただけだけど。だってこんな自分の醜態、見せたくねえし。
瑞樹と同じ学校だって言ったら驚くだろうなー。いや、ヘタすりゃ怒るかも。雄大、瑞樹には厳しかったしな。


「……‥」

すき、きらい…か‥。

河野内家でひどい仕打ちを受けても、恋人だった瑞樹に振られても、俺は決して愛に飢えていたわけではない。
母さんや巧がたくさんくれた。

けど、俺は分からない。
自分が瑞樹とどうしたいのか。

俺は葛藤していた。
何に?そんなの分かんない。強いて言えば自分自身とだ。


あぁヤバい。
今さら眠気が――…







「――はぁはぁ、はあー…。やっぱりここにいたんだ」

もしかしたら探している人物がいるんじゃないか、と来てみれば、案の定的を得ていた。

「陸」

しかし近づいてみれば、静かにスースーと呼吸音が聞こえた。瑞樹は意識のない人物の顔をそっと覗き込んでみた。
瑞樹が探していた人物――陸が眠っていることは間違いなかった。

「…‥寝てる」

「…――」



瑞樹なんか大嫌いだっ。
あの時俺はずっと待っていた。あんな形で裏切られるなんて思いもしなかったから。
だから恋人も友達もやめた。

いつもいつも俺のことなんか後回しにしてほったらかしたのに、好きなんて言うな。
俺は大嫌いだ。
暑苦しい友情が嫌いなら、クールな友達でも作れば良かったんだ。

きらいだ。
嫌いだ。


「おまえ、なんか‥お前‥なんか…‥――らいだ‥」

「えっ陸?‥…って寝言か」

「…‥」

「陸…」


――きらいだ。

早く瑞樹のことなんか忘れて過去にも捕らわれずに楽しく過ごす。
決して逃げるんじゃない。
自分自身と向き合うんだ。

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