アイマイモコ
13
「ねぇ?瑞樹と友達だったんでしょ、どうしてやめちゃったの?」
「お前には関係ない!」
「あるよお。だって今は俺と瑞樹がつきあってるんだからぁ〜。自分の相手のことを知りたいと思うのは当然でしょ?」
「ぬけぬけと、そんなふざけたことがよく言えたもんだなっ!本当はアイツのこと好きでも何でもないクセにっ!」
人の傷つけることを平気でする。
それが他人だったら尚更だ。
何で俺はこんなヤツと友達になってしまったんだろう。
そう言ったらキリはないけど、俺の人を見る目も相変わらず甘かったということだ。
はぁ、バカな俺…。
俺がそんな事を考えてるなんて知らない秋は不敵に笑った。
「あぁそうだね。――てか、寧ろ大嫌いっ。教室で陸のことが好き、なんてバカげたこと言うし、フラフラしてるし、あっさり騙されるしバカみたい」
「……‥」
「あんなヤツ、生きてる価値もないよね?意志も弱いし」
「…‥」
「取り柄は顔だけ」
――はあ?
お前、瑞樹のこと友達だって言ったじゃねえか。
はっ。ベラベラと男のクセに余計なことをよく喋るヤツだ。
お前何様のつもりだよ。
決して俺は、瑞樹の肩を持つわけではないけど、精一杯皮肉めいた口調で秋に問いてみた。
「だったら、お前と一緒じゃん」
「…は?」
「取り柄は顔だけ、だよな?だったら、まんまお前のことじゃん」
「…!」
高野 秋の瞳が微かながらに揺らいだのが窺えた。
――秋に隙が出来た。
俺は自分が受けた逆風をそのままヤツに返そうとした。
自分の弱い部分を見せないため。
とことん悪人になってやる。
「だいたい気持ち悪いんだよ。 男同士の恋愛なんて!考えただけで吐き気がする」
「…‥っ」
「有り得ない。マジ有り得ない。お前頭おかしいんじゃない?」
「っ、」
「お前、本気で男同士で恋愛なんてできると思ったのぉ?」
「‥……」
「――バカじゃねえの」
二度と誰にも関わりたくない。
俺に対して愛を口にするお前は、吹っ切って俺のことなんて忘れちゃえば良いんだ。
恋愛対象になれないお前に優しくするのが本当の優しさじゃない。
ごめんな。
気持ち悪いなんてウソだよ。
お前が俺を好きだって言ってくれた時、本当は少し嬉しかった。
でも、俺のために人を傷つけるお前は大嫌いだった。
「――瑞樹に謝れよ」
「‥……」
「今回の一件はアイツには関係ない。俺が憎いんだったら俺だけを恨め!瑞樹の、クラスの無視をもうやめさせろ」
「…‥陸?」
「それから、もう人の財布盗むんじゃねえぞっ!」
「‥…」
「じゃあな…」
一限の終わりを知らせるチャイムが学校中に鳴り響いた。
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